右頭頂葉に対する経頭蓋直流電流刺激(tDCS)が視運動性眼振および姿勢制御へ及ぼす影響

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抄録

【はじめに,目的】前庭機能障害は,ADL低下や骨折による認知機能低下の媒介因子と報告されており(Semenov, et al., 2015),前庭機能と姿勢制御の関係を検討することは認知症予防として重要である。右頭頂葉は,感覚統合機能を有し(近澤ら,2012),前庭情報および視空間情報処理に関与するといわれている。tDCSは,陽極刺激では脳機能を一過性に賦活,陰極刺激では抑制することが可能であり(Nitsche, et al., 2003),脳研究で活用されている。頭頂葉への経頭蓋直流電流刺激(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)が前庭眼反射に及ぼす影響から,右頭頂葉は前庭情報を統合すると示唆されている(Arshad, et al., 2014)。また,前庭機能障害の評価である視運動性眼振(Optokineticnystagmus:OKN)は,右半球優位性があり頭頂葉後部および頭頂島前庭皮質を賦活すると報告されている(Dietrich, et al., 1998)。このように,大脳皮質前庭中枢における研究は,脳画像研究および前庭眼反射など静的な状態での報告に限られており,姿勢制御との関係についての報告はない。本研究の目的は,tDCS陰極刺激によって右頭頂葉の機能を一過性に抑制し,OKNにおける電気眼振図(Electrooculogram:EOG)および重心動揺計を用いて検討することとした。【方法】対象は,健常成人10名(男性5名,女性5名,21.8±0.5歳,全例右利き)とした。tDCSは,DCstimulator(Neuroconn)を使用し,国際10/20法に準じP4に陰極電極,前頭部に陽極電極を設置し1.5mAで15分刺激した。重心動揺検査は,Twingravicoder6100(ANIMA)を用い閉脚立位,開閉眼での60秒間と,閉脚立位,開閉眼で頭部回旋35°を2Hzで回旋中の10秒間を測定した。OKNは,白黒スリット刺激をCRTディスプレイで30秒間提示し誘発した。白黒スリット刺激は,visualstudio2014(Microsoft)を使用して作成した。EOGは,筋電図・誘発電位検査装置neuropack MEB-2200(日本光電)を使用し,対象者の左右外眼角に探査電極,前額中央部に基準電極を接地し測定した。各測定は,tDCS前後に測定し,重心動揺検査とEOGの測定間隔は3日以上開けた。統計学的分析は,SPSS statistics 22.0(IBM)を使用し,tDCS前後の比較を対応のあるt検定,tDCS前後差における重心動揺検査とEOGの関係はSpearman順位相関分析を用い,有意水準5%とした。【結果】tDCS前後におけるEOGの変化値は,12.3±7.8μVと有意に増加した(p<0.01)。tDCS前後差における閉眼頭部回旋時の実効値面積とEOGの関係は,有意な負の相関(r=-0.47)を認めた。tDCS前後の開眼時総軌跡長は,tDCS前が76.3±21.1cmからtDCS後90.3±32.7cmと有意に延長した(p<0.05)。【結論】右頭頂葉に対するtDCS陰極刺激は,大脳皮質前庭関連領野の機能を抑制したと考えられる。右頭頂葉は,視覚および前庭覚が入力される開眼時の姿勢制御に寄与している可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2015(0), 0527, 2016

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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