頸髄不全損傷者における立位姿勢への調整的介入:重心動揺リアルタイムフィードバックによる姿勢動揺の操作的減弱の即時効果

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抄録

【はじめに,目的】脊髄不全損傷後には運動麻痺,感覚障害,痙性などの影響により立位姿勢の調節に困難が生じる(Lemay:2013. 2014)。痙性の発現が立位姿勢や歩行運動の調節に大きく影響することは臨床経験上良く認識されており,痙性の発現による足関節底屈筋群の過度な応答をいかに適切に抑えるかが臨床場面での課題の一つである。当院では脊髄損傷者への適用を念頭に置いて,重心動揺リアルタイムフィードバック装置を導入し,介入している。この装置は,立位姿勢時の足圧中心の前後変位をフィードバック信号として床面をリアルタイムに動揺させ,本人の知覚にのぼらないレベルで姿勢動揺量を操作的に減弱(in-phase),あるいは増幅(anti-phase)させることを企図して開発されたものである。本研究では,痙性麻痺による過度な姿勢動揺を操作的に減弱させる作用をもつin-phase条件によって脊髄不全損傷者への調整的介入を行い,前後の立位姿勢調節の変化を検討することを目的とした。【方法】対象は頸髄損傷により不全麻痺を呈し回復期病棟入院中の立位保持が可能な男女6名(53±21.7歳)。介入方法として,重心動揺リアルタイムフィードバック装置BASYS(テック技販社製)を用いて立位姿勢時の足圧中心(center of pressure:COP)の前後方向変位と同方向に床面をフィードバック操作することにより姿勢動揺を操作的に減弱させるin-phase条件を実施した。対象者は装置上で立位を保持するように指示し,足部を肩幅弱の規定の位置に合わせた状態での開眼静止立位を実施した。BASYSによる床面動揺操作はCOP動揺量の約10%のフィードバック設定を用いた。各試行は30秒で,介入前の静止立位,in-phase条件(10%),介入後の静止立位を各2回ずつ実施し,介入前後のCOPを測定した。得られたデータよりCOPの動揺速度,95%楕円信頼面積を算出した。また周波数解析により0-0.3,0.3-1,1-3(Hz)のパワースペクトル密度を算出した。介入前後の各値を対応のあるt検定を用い比較した。【結果】COP動揺速度,95%楕円信頼面積ともに,介入前後で全対象者に一致した傾向は認められなかったものの,6名中5名で介入後に動揺速度の減少,95%楕円信頼面積の減少を認めた。COPの周波数特性は,中周波数成分に有意な減少(p<0。05),高周波成分においても6名中5名に減少を認め,全体として低周波帯域にシフトする結果を示した。【結論】中周波,高周波成分の減少はin-phaseで操作的に減弱させることにより脊髄反射の貢献度を減少(痙性の影響を低減)させた結果と考えられる。尚,高周波線分に増加を示した1名は,介入前の時点で他の症例と比較して安定した立位,歩行能力を示しており,顕著な痙性の発現がない症例であった。上記の結果を総じて考えると,脊髄不全損傷者の立位姿勢に対するin-phaseでの介入は痙性の関与の軽減をもたらし,立位姿勢時の重心動揺を安定化させる作用を持つものと考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2015(0), 1018, 2016

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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