動的バランスにおける上肢の平衡反応が姿勢保持能に与える影響

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  • 片脚ドロップジャンプ着地テストによる床反力の検討

抄録

【はじめに,目的】一般的に上肢の平衡反応は姿勢制御に寄与しており,特にスポーツ動作のような動的状況では肩甲帯の可動性も重要と考えられている。しかし,上肢とバランス能力に関する報告はほとんどみられない。そこで,本研究は,上肢の平衡反応が動的バランスに与える影響を探索することを目的とした。【方法】対象は,重篤な既往歴がない健常成人12名(平均年齢26.8±5.6歳;20-36歳)であった。測定は,前方または側方へ20 cmの高さから片脚ドロップジャンプを行わせ,同側の脚で着地した時の床反力を床反力計により計測した。上肢は1)胸の前で組ませる(以下,RES),2)上肢制限なし(以下,CON)の2条件とし,前方・側方の各方向へ右脚・左脚各10回測定した。床反力はダイナミックバランス評価システム(プロティアジャパン社製)を用い,サンプリング周波数1 kHzで計測した。動的バランス能力は,床反力データから,緩衝係数,着地後20-200 ms間の足圧中心(以下COP)の軌跡長,前額・矢状各方向のCOPピーク時刻,ピーク速度,ピーク速度時刻,鉛直方向の床反力ピークおよびピーク時刻について検討した。統計は,前方および側方ごとに利き脚と非利き脚に分けてWilcoxonの符号付順位検定を用いて行い,有意水準5%とした。【結果】緩衝係数,COP軌跡長,床反力鉛直成分ピークは各条件において有意差は認められなかった。前額・矢状方向のCOPは,矢状方向のピーク速度時刻において利き脚のみCON条件で有意に早くなった(前方;RES 0.043 ms,CON 0.037 ms,(P=0.034),側方;RES 0.050 ms,CON 0.043 ms,(P=0.032))。また,床反力ピーク時刻は前方方向の非利き脚条件のみCON条件でピーク時刻が有意に早くなった(RES 0.056 ms,CON 0054 ms,P=0.027)。【結論】健常成人に対し,上肢を制約した条件と制約しない条件で片脚ドロップジャンプを行い,床反力計により動的バランス能力を計測した。床反力や速度のピーク時刻が30~60 msと非常に短い時間で生じていたことから,着地で生じる外力に対し予測的に姿勢を制御しているものと考えられる。上肢の平衡反応は外力に対する応答よりもむしろ,中枢のプログラムに影響を与え,COP速度および床反力の制御を早めるよう動的バランスに積極的に関与していることが示唆された。前額・矢状方向では矢状方向のみCOP速度時刻が早くなったことから,矢状方向のCOPの移動速度を上肢での制御に有利な前額方向に変換し制御しているものと考えられる。また,利き脚・非利き脚間,前方・側方の間にも違いが認められたことから,利き脚やジャンプの方向により上肢の制御の影響力が異なることが示唆された。COP速度に対する上肢の制御が,利き脚では特に有効にはたらくことから,上肢と下肢の協調性が影響する可能性が推察される。本研究は健常成人を対象としており,整形外科的疾患を有する対象においても検討する必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554996352
  • NII論文ID
    130005418276
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1285
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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