通所介護における生活リハビリテーションが居宅でのしているADLに与える効果

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  • 利用開始時と開始12ヶ月後におけるFIMの変化

抄録

【はじめに,目的】通所系サービスにおけるリハビリテーション(以下,リハ)の分野では,身体機能に偏った短時間の個別リハが行われているという課題が挙げられていた。平成27年度介護報酬改定において,身体機能への支援のみならず,活動や参加といった生活行為力に対する支援の必要性が示され,実際の生活課題に着目し,居宅でのしているADLの維持・改善を効果的に支援することが期待されている。当事業所では,平成26年度より,利用者の個別性を考慮し,個々の生活課題に応じた生活リハを遂行していく上で,生活リハにリハ専門職が従事している。本研究は,生活リハを提供する通所介護事業所において,12ヶ月間のサービス利用が,居宅でのしているADLに与える効果について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,当事業所の利用を開始してから12ヶ月が経過した利用者29名(男性18名,女性11名,平均年齢73.9±10.8歳)とした。対象の特性として,基礎疾患,要介護度,通所頻度(1週間あたりの利用日数)を調査した。当事業所は,7時間以上9時間未満のサービス提供時間を有する通常規模の通所介護であり,個別機能訓練加算IとIIに常勤の理学療法士を配置している。生活リハの主な支援内容は,サービス提供時間を通じて必要場面における最大能力での移動介助,在宅環境を想定しての入浴介助やトイレ介助,送迎車への乗降介助等であった。対象において,利用開始時と開始12ヶ月後に機能的自立度評価法(以下,FIM)を調査した。FIMは「総得点」,「運動FIM」,「認知FIM」,更に運動FIMは「セルフケア」,「排泄」,「移乗」,「移動」,認知FIMは「コミュニケーション」,「社会認識」の下位項目に分類した。得られた評価結果について,利用開始時と開始12ヶ月後の数値をWilcoxonの符号付順位和検定を用い,比較検討した。統計処理にはSPSS for Windows10を用い,有意水準5%とした。【結果】対象の基礎疾患は脳血管疾患:20名,整形外科疾患:7名,その他:2名であり,要介護度は要支援1:5名,要支援2:2名,要介護1:7名,要介護2:6名,要介護3:6名,要介護4:2名,要介護5:1名であった。また,通所頻度は1週間あたり平均1.9±0.8日であった。FIMの結果は,「排泄」と「コミュニケーション」を除く全ての項目で有意な改善を認めた。【結論】昨今,求められている活動や参加といった生活行為力に対する支援を行う生活リハによって,通所系サービスでありながら居宅でのしているADL能力に一定の効果を与えることが確認された。サービス提供時間を通して,在宅での生活課題に着目し,課題場面を想定した上で取り組む生活リハは,従来行われてきた身体機能に偏ったリハから脱却し,今後の居宅生活を支える取り組みとして有用であると考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577782528
  • NII論文ID
    130005418449
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1446
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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