2か月間複合運動プログラムが地域在住一般高齢者の運動機能と認知機能に与える影響について

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抄録

【はじめに,目的】我が国の平均寿命は2014年に女性86.8歳,男性80.5歳と年々延伸し,高齢者のQOLの維持・向上,健康寿命の延伸のために各地で様々な介護予防の取り組みが行われている。実際の取り組みとしては,運動機能向上プログラムや認知機能向上プログラムなど,またそれらを組み合わせた複合プログラムが行われている。しかしながら,その効果に関する過去の報告は3か月以上実施したプログラムに関するものが多く,2か月という短期間の複合運動プログラムの報告はまだ少ない。そこで今回は,地域在住一般高齢者を対象とする2か月間の複合運動プログラムが運動機能と認知機能に与える影響を検討することを目的とした。【方法】東京都A市において高齢者支援センターが募集した地域介護予防教室(週1回,1回90分,2か月間)に参加した地域在住一般高齢者18名(男性4名,女性14名)を対象とした。このうち最終評価が出来なかった5名を除外した13名(男性2名,女性11名)を分析対象とした。運動プログラムは,理学療法士と健康運動指導士が隔週で,ウォーミングアップ,筋力トレーニング,スクエアステップエクササイズ,コグニサイズ,リズム体操を指導した。教室参加初回と最終回に評価を実施した。運動機能は握力,等尺性膝伸展筋力体重比Weight Bearing Index(以下,WBI),開眼片足立ち時間,Timed up and go test(以下,TUG)を測定した。認知機能は記憶と前頭葉に関する検査を実施し,記憶は日本版Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsycological Statusを用いて10単語の即時再生・遅延再生のテスト,前頭葉検査は実行機能として山口式漢字符号判定テスト(YKSST),言語流暢性として語想起テストを行った。転倒不安感は転倒不安感尺度を用いて,高次生活機能を老研式活動能力指標を用いて評価した。各指標の複合運動プログラム実施前後の比較には,対応のあるt検定とWilcoxonの符号付き順位和検定を用いて検討した。統計学的解析には統計ソフトIBM SPSS statistics ver.21を用い,有意水準は5%とした。【結果】運動機能においてはWBIが0.32±0.08kgf/kgから0.37±0.11kgf/kgへと有意な改善を認め(p=0.01),握力,開眼片足立ち,TUGには有意な改善を認めなかった。認知機能においては即時再生機能が24.5±10.0点から27.0±10.7点へと有意な改善を認めたが(p=0.024),YKSST,語想起テスト,遅延再生機能テストには有意な改善を認めなかった。転倒不安感尺度,老研式活動能力指標に有意な改善を認めなかった。【結論】地域在住一般高齢者を対象とした2か月間の複合運動プログラムにより,下肢筋力の向上及び即時再生機能が改善した。しかし,改善効果は限定的であり,運動機能や認知機能低下の予防のために適切なプログラム実施期間を今後検討していく必要がある。

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  • CRID
    1390001205579488640
  • NII論文ID
    130005418541
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1564
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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