理学療法学専攻初年次教育における解剖見学実習の教育的効果

DOI
  • 田邊 素子
    東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科

書誌事項

タイトル別名
  • ―計量テキスト分析による検討―

抄録

【はじめに,目的】理学療法初年次教育における基礎医学は重要である。本学では1年次に近隣の大学の支援を得て,人体構造を実際に見学,観察する機会として解剖見学実習を実施している。学内準備として,解剖学の知識,リハビリテーション専門職への心構えや意欲の向上を促す対応を行っている。実習後の簡易アンケートでは,実習について「大変良い」等高い評価を得ているが,具体的にどのような内容を学生が学べたかについては明らかにできていない。計量テキスト分析はテキスト型データから計量的分析手法を基に,内容分析を行う方法で,文字データがあれば詳細な分析が可能である。そこで今回,参加学生の解剖見学実習後の感想レポートを分析することにより,学生がどのような考えや学びを得たかについて明らかにし,本実習の教育的効果について検討することとした。【方法】本学の理学療法学専攻1年47名(男性30名,女性17名)のレポートを対象とした。解剖見学実習の実施は,実習説明オリエンテーション,実習直前のオリエンテーション(解剖のDVD視聴を含む),実習日,実習後の課題で構成される。実習当日は,学生は4グループにわかれ,部位別ローテーション 最後に自由見学時間をとって終了する。実習後の課題には,観察部位のレポート,見学実習後の感想レポートがあり,本研究では感想レポートを解析した。解析は,フリーソフトウェアのKH Coder(樋口ら)を使用した。解析手順は,レポート本文をテキストファイルに変換し,ソフト上で前処理の後,本文から語句を抽出した。「理学療法」,「解剖見学実習」や大学名などの実習に関わる語句,「前十字靭帯」等の解剖学用語など約100語を複合語として登録し抽出した。47名全員のレポートから最頻150語を抽出し,階層クラスター分析および共起ネットワークにて内容を検討した。【結果】総抽出語は41,607語であった。最頻出の上位10語は「脳」「見る」「思う」「実習」「見学」「実際」「今回」「感じる」「自分」「筋」であった。抽出語の階層クラスター分析では12クラスターが得られた。クラスターの概要は,実習への感謝,理学療法士としての心構え,実習参加への気持ち,内臓等の観察内容,靭帯名称,教科書と観察内容の統合,脳・神経系に関する内容,解剖学と人体構造,リハビリテーションと多岐にわたった。共起ネットワーク分析では,「脳」を中心に内臓,上肢,下肢等の観察部位,「見る・思う」について実際に観察することでの理解,実習への感謝としてご献体への感謝,理学療法士と患者や治療などの関係性が明らかになった。【結論】解剖見学実習は,人体構造の具体的な理解を拡充するとともに,教科書と観察事項の統合,医療専門職としての動機付け,ご献体への感謝,など,理学療法士を目指す上で,認知領域,情意領域の双方の教育的効果が得られたと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579946752
  • NII論文ID
    130005418676
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1661
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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