チンパンジー胎児の腓腹神経の解剖学的研究  [in Japanese] An anatomical study on the sural nerve in fetal chimpanzees  [in Japanese]

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Abstract

<p>腓腹神経(NS)は膝窩で脛骨神経から分岐し、腓腹筋外側頭と内側頭の間を下行し足背に出て小趾背側外側縁に分布する純知覚性の皮神経である。しかしニホンザルでは、NSに小趾外転筋や骨間筋などを支配する運動線維が含まれ、これらの線維がNSと外側足底神経間の交通枝に含まれることも知られている。このような交通枝は、ヒトをはじめゴリラなどにも出現することがある。ヒトや類人猿においては、この交通枝が胎児期に形成されるが、成長とともに消失するのではないかと考えた。この仮説を検証するため、チンパンジー胎児2頭、2側の下肢を用いてNSの起始と足背分布を調べた。第1例(ID: PRI 7993、左):NSは脛骨神経からヒラメ筋の筋枝、腓腹筋外側頭の筋枝とともに共同幹をなして分岐した。NSは外果後方を回って外側足背皮神経となった。外側足底神経との交通はなかった。NSは第5中足骨外側縁皮下に分布した。第10趾縁にはNSの代償として浅腓骨神経の枝が分布した。第2例(ID: PRI 8507、右):NSの起始は第1例と同じであった。また足背分布もヒトをはじめ他の動物と同じく第10趾縁であった。外側足底神経との交通は認められなかった。チンパンジー胎児のNSと外側足底神経との間に交通枝は見られず、本仮説は棄却された。しかし解剖例が少ないことと、ほぼ新生児に近い個体であったため、より発生初期の胎児を対象にした今後の研究に期待したい。一方、NSの起始がヒラメ筋の筋枝および腓腹筋外側頭の筋枝と共同幹をなしていたことは、NSが主幹でこれらの筋枝がその枝であるとも言える。このことは、NSが上肢の尺骨神経に相同である、という説を裏付ける所見である。また第1例の第10趾縁分布皮神経が浅腓骨神経の枝であったことは、チンパンジーにおいてはNSの足背分布が縮小傾向にあることを示し、NSが必ずしも第10趾縁に分布する絶対的な皮神経ではないことを示している。</p>

Journal

  • Primate Research Supplement

    Primate Research Supplement 32(0), 66-66, 2016

    Primate Society of Japan

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