Latrunculin A によるクローンマウス作製法の簡略化および出生率の改善

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  • Latrunculin A can improve the birth rate of cloned mice and simplify the nuclear transfer protocol by gently inhibiting actin polymerization

抄録

【目的】核移植胚の多くは初期化不全により死滅すると考えられており、エピジェネティック異常を修復すると、クローン産仔率は改善される。しかし核移植胚は、受精卵が遭遇することのない人為的処理によって作製されるため、初期化不全以外にも発生率を低下させる原因があると考えられる。本研究では、核移植後の偽極体放出抑制法に着目し、クローン作製法の改良を試みた。【方法】従来法では、染色体の一部が偽極体として放出されることを防ぐため、核移植後にCytochalasin B(CB)を用いてアクチン重合を阻害する。本研究では、G-actinと結合するLatrunculin A(LatA)をCBの代わりに用いた。はじめに、単為発生胚を用いてLatAの最適濃度を決定し、次にこの濃度で作製したクローン胚の産仔率を、CBを用いた場合と比較した。また、LatA処理核移植胚の細胞骨格及びヒストン修飾状態を、受精胚及びCB処理核移植胚と比較した。更に、LatAを長時間処理した場合の発生への影響を調べた。【結果】極体放出抑制に必要十分なLatA濃度は5 µMであり、この時クローン産仔率は13.0%で、CB使用時の5.9%に対し有意に高かった(p < 0.05)。CB処理胚には、CB処理中から処理終了後30分までの間、F-actinの細胞質中への異常な局在があった。一方、前核期胚のacH3K9、acH3K14、H3K9me2及びH3K4me2レベルは、LatA処理胚にもCB処理胚と同様な異常がみられた。従来法では培養6時間後にCBを、10時間後にTSAを培地から除くことが必須だが、F-actinの染色結果よりLatAの毒性は低いと考えられたため、LatAとTSAを含む培地で連続10時間培養した。結果、6時間目の胚の洗浄を省略でき、クローン産仔率は15.6%にまで上がった。【考察】核移植胚作製技術自体にも、核移植胚の異常の原因があることが分かった。さらに、LatAは、より簡単に効率よくクローンマウスを作製することを可能にした。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715772672
  • NII論文ID
    130005457607
  • DOI
    10.14882/jrds.105.0_1017
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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