部位特異的変異体による霊長類苦味受容体TAS2R16の機能解析

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タイトル別名
  • Mutational analysis of primate bitter taste receptor TAS2R16

抄録

苦味受容体TAS2R16はヤナギの樹皮に含まれるサリシンなどの苦味物質を受容する。これまでの研究により、ヒト、チンパンジー、ラングール、マカクの中で、マカクが最も低いTAS2R16の感受性を持つことが確認された(Imai et al, Biology Letters in press)。ニホンザルはヤナギ等の樹皮を冬季に採食することが報告されているが、その要因の一つとして樹皮の苦味に対する感受性の低下が関係していることが考えられる。そこで、この感受性の低下を引き起こす分子メカニズムを検討するため、TAS2R16の部位特異的変異体を作製し、受容体の機能に与える影響を検討した。今回検討した霊長類種の中でマカクにおいて特異的に変異が生じている部位は6か所ある。これらの変異部位について、ヒトTAS2R16をそれぞれマカク型に変更した変異体の機能を検討した結果、3番目の膜貫通領域に存在するGlu86のマカク型(Thr)への変異(E86T)により受容体の感受性が著しく減少した。また、第3細胞外ループに存在するLeu247、7番目の膜貫通領域に存在するVal260の変異もわずかな感受性の低下を示した。これらの部位の二重変異体(E86T/L247M, E86T/V260F)は単独の変異体よりも感受性の低下が大きいことから、これらの変異の表現型への影響は加算的であると考えられる。このような傾向は、ラングール(white-headed langur)のTAS2R16変異体でも同様であった。一方、マカクのTAS2R16を逆にヒト型にした変異体(T86E)は、マカク野生型よりも感受性の増加を示した。これらのことから、マカク類で特異的に生じたアミノ酸変異により苦味受容体の感受性の低下が起こり、採食活動にも影響を与え、苦い樹皮も食べられるようになったことが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610692992
  • NII論文ID
    130005471432
  • DOI
    10.14907/primate.28.0_66
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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