新世界ザルの上顎大臼歯進化傾向

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抄録

 一般的に,哺乳類の大臼歯の基本型はトリボスフェニック型大臼歯であり,上顎臼歯ではその進化上 3咬頭から遠心舌側に hypoconeが出現し 4咬頭となった.現生の新世界ザルにおいてマーモセット類は 3咬頭であるが,それは必ずしも原始的というわけではない.本研究ではオマキザル類とマーモセット類の上顎第 1大臼歯,特に hypoconeの出現パターンを比較検討し,その進化傾向について予備的に考察する.現在のところ最古の新世界ザルとされている Branisella boliviana<i>は hypoconeを持つが,上顎大臼歯の形質はマーモセット類に近い.ここで,現生のマーモセット類をみると, <i>Callithrixは 3咬頭で hypoconeは存在しない.いっぽう Saguinusは小さな hypoconeを持つ種もあり,3咬頭と4咬頭が混在している.マーモセット類の次のステージで,かつ新世界ザルにおいて原始的な形質とされる大臼歯を持つ Saimiriは hypoconeがあり完全に 4咬頭である.Saimiriの化石種である Neosaimiriと現生 Saimiriの進化傾向をみると,現生種への進化過程において hypoconeの高さは縮小傾向にあり,高い hypoconeをもつ個体は減少していることが示唆された.マーモセット類における hypoconeの出現パターンおよび Saimiriの進化傾向を検討した結果,新世界ザルは 4咬頭から 3咬頭に進化している可能性がある.

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  • CRID
    1390282680612148736
  • NII論文ID
    130005471583
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_162_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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