2000年代前半のインドネシアにおける世帯支出水準別世帯の特徴

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  • Characteristics of Indonesian households categorized by expenditure level in the early 2000s

抄録

1.はじめに<BR>  インドネシアでは、1997年の経済危機以降、社会・政治情勢が比較的安定的であったことも寄与し、2000年代を通して経済成長が継続した。この間、インドネシアの貧困率は、2000年の19.14%から2009年の14.15%まで大きく減少した(BPS 2009)。しかし、その地域差は大きく、2009年の州別貧困率は、最小のジャカルタで3.6%、最大のパプア州では37.5%を占めている。また、2009年時点で貧困層の63.4%が農村部に居住すると推計されており、農村-都市間の格差も大きい。ジニ係数は2005年時点で、0.36と他の東南アジア諸国と比較して低いものの、1990年代の経済成長以降増大傾向が続いており、地域差もみられることが指摘されている(カダルマント 2005)。このように、インドネシアにおける貧困や経済的格差は、依然として注視していくべき問題であり、その地域的差異についても考慮する必要があるといえる。しかし、2000年代の経済成長に伴う世帯支出水準の変化や世帯支出水準別の世帯の特徴について、地域間差異に注目しながら検討した研究はほとんどみられない。<BR> そこで、本研究では、1963年以降インドネシア中央統計庁(BPS)によって、毎年実施されている社会経済調査(SUSENAS)のミクロデータを用いて、地域的差異に注目しながら、2000年代前半のインドネシアにおける世帯支出水準別の世帯の特徴を明らかにすることを目的とする。<BR>2.利用データと研究方法<BR> SUSENASの調査項目は、サンプル世帯の保健、福祉厚生、消費支出、教育、住居状況など多岐に渡っており、インドネシアにおける貧困線の設定などに利用されている。また、この調査は、1992年以降毎年実施されているコア調査と3年毎により詳細な項目について実施されるモジュール調査から構成されており、本研究では2000年、2003年、2006年に実施されたコア調査のデータを用いて分析を行った。<BR> 分析に当たって、サンプル世帯を州別都市-農村別に1ヶ月当たりの世帯支出に基づく5分位によるグループに分類し、それぞれの5分位グループ別に世帯消費支出の水準や世帯構成の特徴について検討した。<BR>3.インドネシアにおける世帯支出水準別世帯の特徴と地域間差異<BR>  分析の結果、インドネシアでは、1ヶ月当たりの世帯支出水準について上位20%を占める世帯グループが、州別都市農村別総世帯支出の30%以上を占めており、経済的上層世帯への支出の偏りがみられた。また、その偏りは、2000年から2006年に掛けて、特に都市部において拡大していることが示された。<BR> 1ヶ月当たりの世帯支出水準に基づく5分位世帯グループ別に世帯の特徴を検討すると、世帯主の学歴、世帯規模などについては、世帯支出水準により差異がみられる一方、母子世帯については他の世帯構成よりも必ずしも貧しいとはいえないことが確かめられた。<BR>参考文献<BR>カダルマント 2005.インドネシアにおける1990年から2000年までの所得格差の実態‐政府統計Susenasの支出ミクロデータに基づく分析‐.SAS Forumユーザー会学術総会論文集.329-342.(本文英文)<BR>BPS 2009. Statistik Indonesia 2009(2009年インドネシア統計年鑑). BPS: Jakarta.

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詳細情報

  • CRID
    1390001205696232576
  • NII論文ID
    130005473137
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_156
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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