Locational Hysteresis and New Spatial Division of Labor

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  • 研究開発機能の立地履歴と新空間分業
  • 日本の化学企業9社の事例
  • R&D in 9 Japanese Chemical Firms

Abstract

Ⅰ はじめに<BR> 経済地理学においては,製造業大企業を分析対象とする「企業の地理学」が見直され(近藤2007),企業の動態を捉えるにあたっては,組織の慣性などを分析に取り入れる進化経済地理学が注目されている(外枦保 2012).日本の製造業では1980年代後半以降,生産機能の海外移転が急速に進展する一方で,研究開発機能は,国内に集中してきたといわれてきた.しかしながら2000年以降は,海外の進出先に現地対応の開発拠点を新設する企業が増え,研究開発機能におけるグローバルな空間分業が徐々に進展しつつあるといえる.また研究開発活動においては,知識のフローが重視されるため,組織部門間の知識フローに影響を与える,部門間の地理的な配置も重要とされる(太田2008).<BR> そこで本研究では,専ら国内の生産体制における製品間・工程間分業に焦点を当ててきた従来の空間的分業論に対して,新たな分析視点として「新空間分業」の考え方を導入した.具体的な観点は,①国内外の拠点を一体的に取り上げ,②組織や立地の慣性,経路依存などを重視し,③知識フローに注目することである.<BR><BR> Ⅱ 対象企業の概要と分析方法<BR> 本研究では,海外顧客への対応やM&Aによってグローバル化を進める日本の化学企業9社を対象とし,(a)財閥系,(b)繊維出身,(c)スペシャリティの3グループに分類して分析を行った(表1).具体的には,主に社史,新聞記事,IR資料を用いて研究開発機能の立地履歴を明らかにし,聞き取り調査と拠点ごとの特許の出願状況から,現在の研究開発活動における中核拠点を摘出し,拠点間の関係について考察した.<BR><BR>Ⅲ 分析結果<BR>まず「新空間分業」の①国内外の分業関係に関して,現地生産子会社の機能変化やM&Aなど,地域間において進出形態が異なっており,国内拠点との知識フローの方向性に相違が見られた.<BR> 次に②の慣性や経路依存に着目すると,特に立地形態において経路依存的な変遷をたどる企業と,組織や周辺環境の変化によって経路を転換する企業があった.前者のタイプの企業の多くは創業地を研究開発機能の中核拠点としている傾向があり,後者の企業は合併や都市化によって分業形態を大きく変化させていた.<BR> 最後に③の知識フローに関して,特許の出願状況を分析すると,企業外の組織との関係について企業間で差がみられたほか,企業内の拠点間において,一拠点内部で大半が完結している企業と,複数の拠点間での共願関係が多くみられる企業があった.<BR><BR> Ⅳ 議論<BR> 以上にみた企業間の差異をいかに解釈するかが問題となるが,事業戦略や企業文化の違い,合併や子会社化などの組織変更の有無などの点から検討を試みることにしたい.<BR><BR>参考文献<BR>太田理恵子2008.研究開発組織の地理的統合とコミュニケーション・パターンに関する既存研究の検討.一橋研究32(4): 1-18.<BR>近藤章夫2007.『立地戦略と空間的分業―エレクトロニクス企業の地理学』古今書院.<BR>外枦保大介2012.進化経済地理学の発展経路と可能性.地理学評論85(1): 40-57.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696316288
  • NII Article ID
    130005473180
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_183
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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