Conversion of subsistence economy among the local people living close to mangrove in Hainan Island, China

DOI
  • WANG TINGZHUO
    Graduate school of social and cultural studies, Kyushu University

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Other Title
  • 中国・海南島マングローブ地域における地域住民の生業転換

Abstract

本研究は中国・海南島東北部のマングローブ周辺地域における地域住民生存基盤の転換に注目し、その実態と生存戦略としての生業変容過程を明らかにすることと同時に、この地域において持続的発展の可能性を持つ生業を探り、自然保護区と地域住民の生活維持・発展との調和のあり方を探ることを目的とする。 調査地域の自然保護区周辺における代表例として海南省海口市美蘭区三江鎮のY村を取り上げ、2012年8月に、現地において2週間調査を行った。同時に、海南省林業庁において「東寨港国家級自然保護区」に関する情報・統計資料の収集を行った。対象村落において地域住民に対して聞き取り調査を実施し、住民の構成、就業活動の実態とマングローブ生態系利用形態を記録した。さらに、GPSとGISを利用し、聞き取りデータと合わせ対象村落全体の土地面積と利用状況、さらに村内の親族関係による居住空間の住み分け、業種別の世帯分布などを可視化した。 海南島は、中国最大のマングローブ分布地域であり、調査地近郊には中国最大のマングローブ自然保護区「東寨港国家級自然保護区」が存在する。当保護区は1980年に指定された中国最初のマングローブ自然保護区である。1986年に中国中央国務院によって、国家級自然保護区に格上げされ、1992年にはラムサール条約に登録され、国際重要湿地名簿にも登録された。保護区内では、原則として生業活動が禁止されている。調査村のY村は保護区の東南部に位置し、従来は伝統的な漁村であり、村民の大半が漁撈活動を営んでいたが、自然保護区が設置されて以後、漁撈活動以外に、農業経営、養殖池経営と出稼ぎという複数の生業を組み合わせて生活することを余儀なくされた。調査村全体は95世帯であり(外に戸籍を移した者も含む)、人口は466人のうち、男性238人と女性228人となっており、村人全員が漢民族である。 現地調査により明らかになったことは以下に要約される。1)マングローブ生態系利用の側面から見ると、保護区指定以前の主生業としては、漁撈活動を含む多様な利用法がみられたが、保護区指定後の現在では、水域は漁撈、養殖池と防洪堤防のみに利用されているように見える。2)マングローブ自然保護区側が定めた違法漁法(電気ショック漁)や小網目漁具の使用制限などによって、調査村における漁撈活動は明らかに衰退しつつあり、現在では、漁撈を行う世帯の割合は1割未満になっている。3)台風シーズンが長く(多雨地域)、高価値換金用作物の栽培が困難であることのほか、土地面積の限界や水質汚染などの要素によって、保護区指定以後に発展してきた農業や養殖池経営の限界が見えるようになった。現在では、業種別で出稼ぎ世帯が一番多くなっており(57%)、20代~50代まで各年齢階層が見られる。4)2010年に自然保護区側が「社区(コミュニティー)共管科」という部門を新設し、Y村を住民参加型理念のモデル村に設定し、マングローブ保全の方向が模索されている。 以上のように、自然保護区の設立による地域住民生活への影響は大きく、生計は不安定になっていることが示唆された。一方、保護区側の活動によって村においてさらに新たな業種が生まれ、住民の生業がさらに変容していくことが予想されるため、それについて今後の動向に注目したい。 今後の調査で、全世帯において各業種に関して詳しく聞き取り調査等を実施する。それによって、生業構造を世帯の動機をベースとして分析し、持続的に発展させる可能性を論じる必要があると考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695961088
  • NII Article ID
    130005473224
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_214
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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