インターネットの普及に伴う「島旅」の変化

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書誌事項

タイトル別名
  • Changes of the Island Trip with the Spread of Internet
  • 沖縄県宮古島の場合
  • A Case Stude of Miyako Island

抄録

インターネットの普及は、観光客による航空券・宿泊等の予約、旅行情報の収集や、観光施設のPR活動に大きな変化をもたらした。離島の場合、観光関係者が観光客の発地に出向いてPRを行うには多額の費用がかかるため、従来のPRは離島情報誌、パンフレット等の紙媒体や口コミに大きく依存していた。しかし、インターネットの普及後は観光施設の独自Webサイトや大手旅行予約サイト等を通して発地にいる不特定多数の観光客に情報を迅速に伝えることが可能となり、情報の質・量も飛躍的に向上した。<br> 助重(2010)では、沖縄県宮古島の小規模宿泊施設へのヒアリングをもとに、インターネットの普及が小規模宿泊施設の急増をもたらした要因の一つであることを解明したが、観光客による旅行予約や情報収集の実態には言及しなかった。また、2010年以降はfacebook等のSNSやスマートフォンの急速な普及により、Webサイトのあり方や閲覧方法が大きく変化しており、宿泊施設のインターネットの利活用にも変化が生じているものと考えられる。<br> 本報告では上記の点をふまえ、観光客による旅行予約や情報収集の実態を宮古空港等で行ったアンケートをもとに分析する。また、2010年以降のインターネット環境の変化が小規模宿泊施設の経営にどんな影響を及ぼしたのかを、助重(2010)の調査対象施設への再調査をもとに考察し、離島を巡る「島旅」の変化の一端を明らかにする。<br>Ⅱ 観光客による旅行予約と旅行情報収集の実態<br>1.航空券の予約<br> 調査対象者180名中86名(47.8%)が旅行会社や航空会社のパックツアーを利用しており、うち44名が旅行会社・航空会社のWebサイトで予約していた。一方、旅行の手配をすべて個人で行った観光客は62名(34.4%)いたが、うち50名が航空券を航空会社等のWebサイトで予約していた。<br> 宮古島では先島航路の旅客輸送全廃(2008年)に伴い、島外との交通手段が空路だけになった。2011年にはJTA、RAC、ANAに加え、スカイマーク・エアラインズが那覇-宮古線に参入し、早期割引航空券や、航空券とホテル(+レンタカー)を自由に選択できるダイナミックパッケージ(DP)の値下げ競争が激化した。このため、店頭販売より割安な航空券やDPをWebで予約する観光客が増えたものと考えられる。<br>2.宿泊施設に関する情報収集と予約<br> 旅行の手配をすべて個人で行った観光客62名のうち、38名がWebで宿泊予約を行っていた。このうち、23名は宿泊施設独自のWebサイトにある予約フォーム等を利用しており、大手旅行予約サイトや航空会社の宿泊予約ページからの予約を上回っていた。<br> 一方、宿泊施設に関する情報収集では、大手旅行予約サイトの利用がもっとも多く、宿泊施設独自のWebサイトを上回った。以上の点から、大手旅行予約サイトで宿泊施設を探した後に、宿泊施設独自のサイトを閲覧して、気に入った施設に予約を入れる観光客が多いものと考えられる。<br>3.島内での観光行動に関する情報収集<br> 島内での観光行動(観光地巡り、ダイビング等)に関する情報収集方法は、「観光パンフレット・マップ」、「旅行雑誌」がWebサイトを大きく上回っており、依然として紙媒体が重視されていることが明らかになった。<br>Ⅲ SNS・スマートフォンの普及と宿泊施設の経営の変化<br>1.インターネットによるPR活動の変化<br> 助重(2010)の結果では、大部分の小規模宿泊施設がホームページによるPR活動を行っていたが、2013年においてはブログやfacebookを利用する宿泊施設が増加した。小規模宿泊施設では、ダイナミックパッケージや大手旅行予約サイトで集客を図るホテルに対抗するため、宿泊客と双方向のコミュニケーションをとり、リピーターの定着を図ろうとする動きが活発化しているといえる。一方で、ダイバー等、特定の常連客にターゲットを絞り、インターネットを利用したPRをやめた宿泊施設もみられた。<br>2.宿泊予約方法の変化<br> 宮古島では、楽天トラベルの登録施設が2013年7月時点で100軒を上回ったように、大手旅行予約サイトに登録する施設が増加し続けている。しかし、小規模宿泊施設の場合は、大手旅行予約サイトを積極的に利用して集客を図る施設と、大手旅行予約サイトは積極的に利用せず、ブログやfacebookで安定的な集客を図ろうとする施設に二極分化する傾向がみられた。<br>3.館内におけるインターネット利用形態の変化<br> 多くの施設では、客室でLANを使用できるようにしているが、スマートフォンの発達に伴い、パソコンを持参したり公共スペースに設置した共用のパソコンを利用したりする客は減少傾向にある。宮古島ではほぼ全域で携帯電話の電波も良好に受信できるため、客室のLANやロビーに置いていたパソコンを撤去した施設もみられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672361472
  • NII論文ID
    130005473556
  • DOI
    10.14866/ajg.2013a.0_100139
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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