人類史における養蜂への地理学的視点 GGeographical perspectives on apiculture throughout human history

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抄録

<b><b>1.問題の所在</b><b></b> <br> 人類は古くから世界各地でハチ類を食用・薬用をはじめさまざまに利用してきた。おもにスズメバチ類およびハナバチ類の社会性ハチであるが、なかでもスズメバチ類の食用とミツバチの利用は多岐にわたっている。その直接的生産物として蜂の子・はちみつ・花粉・プロポリス・蜜蝋が、食品、化粧品、芳香剤、薬、治療、防腐剤、など日常生活のみならず儀礼でも重宝されてきた。間接的には農作物の花粉交配用に農業で使われてきた。こうした世界各地で野生ミツバチの巣の採集・養蜂・食用のさまざまな技術や文化が形成されてきた。<br> 生物的には、社会性昆虫でありコロニーを作り、人体を刺害する危険生物であるものも多い。とくにスズメバチ類の攻撃性は強いため、危害はしばしば問題となる。ハチ類とヒトとの関わり合いの原初形態から都市養蜂にいたるまでさまざまであるが、野生種と家畜種の存在、環境およびその変化の影響があり、利用の観点からは、営巣地、飼育場所、蜜源・エサ源の分布との関連に注目でき、自然と社会の相互関連のなかにあるハチ利用は興味深い。<br> ミツバチ養蜂や利用文化、製品の活用に関する研究は数多く、ハチミツ採集は資源利用とともに集団の存立にも重要な役割を果たしていることから人類学でも注目されてきた。しかし、地理学においてはハチ類の利用はあまり注目されていない。  本発表では、とくに野生ハチの利用から飼育(半養殖・養殖)への展開とその広がりを諸文献・資料および報告者の現地調査をもとに概観し、ハチ類利用文化の分布と伝播・拡散・変容の歴史を、空間性(自然および社会)、変化、人のネットワーク形成に注目し、地理学的な観点でどのような論点を提示することが可能かを検討することを目的とする。<br>  <b>2.野生ハチ採集から家畜化にいたる程度と社会空間性<br></b><b></b> 野生ミツバチやスズメバチの巣の採集は刺害や営巣場所が高所や山奥では苦労や危険を伴うこともあるが、それでも生産物を求めて獲得をめざす。この野生に対する「挑み」といえる感覚が、生産物の価値だけでなく、採集者の社会的な関係形成にも関連する。<br> いっぽうヨーロッパでは都市養蜂が古くから行われており、日本でも都市養蜂が各地に広がりつつある。危険とみなされがちな生物のこのような人々の許容がどのようにして成り立つのか。<br> 飼育においてはハチ群がいかに逃げないように飼育するか、より多くの生産物が得られるように蜂群を造成するにために、蜂群の個体数・勢力の管理、飼育群間のバランスをいかにとるか等のハチへの対応と、まわりの環境をいかにして整えるか等の対処が必要である。現代のセイヨウミツバチ養蜂でも完全な家畜化はなされておらず、みつ・えさ源を外部環境に依存し、ハチの生育はコントロールしきれていない。ハチを生育する空間は自己所有地でいことが多いので、他者・社会との関係が重要であり、また、環境変化にも受動的となることが多い。こうした相互関連は、社会の調整機能の重要性をあぶり出す。<br>  <b>3.ハチ飼育・生産物の複合と地域資源化</b><b></b> <br> ミツバチ養蜂は直接的には利用できない花蜜などを生産物として形にすることにより、新たな地域資源をうみだす。さらに、はちみつは原料として食品をはじめその他の生産物も加工によりさらに製品化される。この過程でさまざまな産業連関・人のネットワークができ、地域資源として成り立つ。   <br> <b>3.課題<br></b><b></b> 以上の注目点が、地域、民族集団でどのように行われているのか、また、それらが固定的なのか。家畜化の段階、バリエーションといった人類史的な技術発達の課題のなかで、飼い育てる契機がどのようなものであり、担い手も含め、技術の発達・普及はいかなるものかといった論点で地理学的に研究対象とすることが可能となると考えられる。たとえば、技術の発達や巧緻化に関しては、増殖・養殖を行い得る技術知識(文化)、経済的意味(食料源として有利になる、金になる、贈与物)、社会的可能性(場所、近隣社会関係)などさまざまな相互関係で成り立っている。<br> これらの飼育にみられる対処を、生き物の活動に即して、その自然状態を生かして飼育する「いなし」としてとらえることを提案したい。それによって、ミクロなハチ個体から周辺の自然・社会環境にいたるまでの自然と人間の関係を空間的な広がりとしてとらえることができる。<br></b>

収録刊行物

  • 日本地理学会発表要旨集

    日本地理学会発表要旨集 2014s(0), 100112, 2014

    公益社団法人 日本地理学会

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