大都市近郊における都市農業の再編とそれにともなう農村空間の商品化

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タイトル別名
  • The commodification of rural space with the restructuring of urban farming in the urban fringe of Tokyo metropolis
  • 東京都立川市砂川地区を事例にして
  • a case study of the Sunagawa area, Tachikawa city

抄録

研究目的 東京都立川市砂川地区を事例にして、都市農業の再編とそれにともなう農村空間の商品化の地域的な様相を明らかにする。東京西郊に位置する立川市では、都市化の進展とともに農家数や農地面積は減少傾向にあるが、砂川地区では農家や農地が集中して残存し、植木や野菜、果樹、花卉、畜産物など多様な農産物が生産されている。このような、砂川地区の農業も都市農業としての再編を余儀なくされ、農村空間の新たな商品化が模索されている。<br>研究フレームワーク 都市農業は農業生産だけでなく、緑地機能や住環境の向上、あるいは災害時の避難場など多様な機能をもつことで特徴づけられてきた。しかし、小規模な農地を基盤にして、多品目少量生産で安全・安心な農産物を都市住民に供給することが、都市農業の本質的な機能であることに変わりない。そのような小規模生産の農産物を、大量生産による廉価の農産物を対象とする大都市市場に出荷することができない。そのため、都市農業の農産物の多くは農産物直売所やローカルな市場に供給されている。本研究では農産物直売所に注目し、農産物直売所の存在形態が、都市農業の再編や農村空間の商品化の程度を反映するものと考えた。実際、農産物直売所は農家と都市住民の交流の場であり、農村空間と都市空間の結節点でもある。<br>農産物直売所の存在形態 立川市における農産物直売所は91あり、それらを経営形態からみると、4つの共同直売所と、87の個人経営のものに分けることができる。さらに、個人経営の農産物直売所は、提供品目(少品目/多品目)や、他の事業との組み合わせの有無などによって4つに類型化することができる。つまり、伝統型直売所、多品目農産物型直売所、農商工連携型直売所、および体験・コラボレーション型直売所である。 伝統型は小規模農地で生産された農産物を単純に直売所で販売するもので、都市住民のニーズはあまり反映されていない。そのため、販売時間が短く、品目構成が少ない。そして、販売品目の端境期も比較的長くなっている。多品目農産物型は都市住民のニーズにできるだけ応えるため、品目構成が多くなり、販売の仕方にもさまざまな工夫がみられる。農商工連携型は農産物を販売するだけでなく、農産物を利用した加工品も生産・販売し、さらには農産物を調理して提供する農家カフェやレストランを併設している。他方、体験・コラボレーション型は都市住民の安全安心な農産物生産に対するニーズや余暇活動へのニーズに応えて、直売所だけではなく、農産物の生産を体験する農場を組み合わせたものになっている。都市化の進展と都市住民の需要の多様化に応じて、伝統型から多品目農産物型へ、そして農商工連携型や体験・コラボレーション型への発展・分化がおき、これが農村空間の商品化の進行を反映している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671595520
  • NII論文ID
    130005473683
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100033
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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