地理教育用AR(拡張現実)情報システム(1)

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タイトル別名
  • Augmented Reality (AR) Information System for Geography Education (1)

抄録

AR(Augmented Reality;拡張現実)とは、目の前に存在する事物について、そこに見えない情報をモバイル機器の活用によって付加・提供することであり、バーチャルリアリティ(仮想現実)と対を成す新しい技術・概念である。情報の付加は、その事物に付けられたマーカによる方法(マーカー型AR)や、その事物それ自体の形状等を認識して行う方法(マーカーレス型AR)、その事物の位置情報から行う方法(位置情報型AR)がある。位置情報型ARでは、GPS携帯電話内蔵のカメラで撮影中の景観画像に、位置情報から同定されたネットワーク上の情報を重ねあわせてみることなどができ、一種のGISともいえる。本研究は、この位置情報型ARに関心を寄せる。<br> 地理教育におけるARの意義 今日の地理教育においては、地理的知識の定着と地理的な見方・考え方の習得が2つの柱となっている。その前提として、地理的事象を的確に認識することが重要となる。しかしながら、地理的事象を的確に認識すること自体、実は大変難しい。特にフィールドワークなどの野外授業では、目に入ってくる事象の何に着目すべきなのか、なぜその事象を着目すべきかなど明示されているわけではない。そのため、「目に入っていても見ていない」ということが起こるのである。ARの利用は、実際のフィールドに出て、その場を見ながら、その地域的背景の探求や理解を助ける情報を提供するものであり、このようなAR機能をもつGISが教育現場に提供できれば、こうした事態を改善できる。  さらに、井田によれば、図1のような学習プロセスにおいて、GISは、③「情報の整理」や⑤「発表・表現」に用いられ、本来GISが力を発揮する④「分析・解釈」に十分に活用されていないという。ARとの組み合わせは、まさにこの④の活用を促すものである。また、ARはその本来的機能から②や⑥の強化支援としても効果的である。<br> 教育現場におけるAR利用の容易性 GISの教育利用では、ハード(パソコン)とソフトの整備が常に課題となっていた。それらの購入を要する状況は、大きな障害になった。これに対してARは、スマートフォンやタブレット端末での利用を前提に開発されてきた技術であり、これらの端末が広く普及すれば、ARは容易に利用できることになる。 ここ数年におけるスマートフォンの急速な普及は誰もが認識している通りである。それを教育現場で利用することについては賛否もあるものの、パソコンと比べれば、その普及度から、はるかに使用しやすいのも事実である。  また、文部科学省が2011年「教育の情報化ビジョン」で、小学校から高等学校までの児童・生徒1人1人に1台ずつのタブレット端末を2020年までに整備するとの目標を定めたことと関わって、佐賀県武雄市や東京都荒川区のように2016年度から全小中学生に同端末を配布する自治体もあらわれている。また、昨年来、論議を巻き起こしてはいるが、県立高校新入生に対し、タブレット購入を求める佐賀県のような動きさえある。このようなタブレット端末の普及は、AR利用を容易にするものである。  以上から、地理教育や環境・防災教育において、AR利用に意義や容易性があるといえ、その利用の具体化をはかることは、同教育分野の深化につながるといえよう。 <br> 参考文献 井田仁康(2005)『社会科教育と地域』NSK出版 <br>

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詳細情報

  • CRID
    1390282680671601024
  • NII論文ID
    130005473688
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100031
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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