ナミビア北部に広がる季節湿地の自然環境と人々の認識:参加型農村開発に向けた景観分析 Environment of seasonal wetland and its recognition by local people in north-central Namibia:Landscape analysis towards the participatory rural development

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1. はじめに<br>地域の自然環境にあった適切な農村開発を行う上で、自然環境条件に関する情報を当該地域の住民といかに共有し、開発プロジェクトにフィードバックするのかという方法が、参加型アプローチが主流になった現在でも主要な課題の一つとなっている。発表者はこれまで、南部アフリカの乾燥地に位置するナミビア共和国において実施されてきた稲作導入に関する研究プロジェクト(科学研究費補助金:代表者 飯嶋盛雄)やJICA/JSTによる地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)プロジェクトに関わり、農牧社会における稲作導入やイネ-ヒエ混作農法の開発に携わってきた。本研究では、地理学の分野で研究がすすめられてきた景観分析の手法を用いて季節湿地の環境解析を実施し、住民による季節湿地の認識との差異を検討した。そして、科学的な知見と住民の認識が参加型アプローチのなかでどのように融合される可能性があるのか検討することを目的とした。 <br><br>2. 方法<br>2012年12月~2013年3月、2013年11月~2014年3月にナミビア北中部に位置する3村において現地調査を実施した。敷地内に季節湿地を有する14農家を対象とし、季節湿地の土壌、植生、水位変動の調査を実施した。また、これらの農家の世帯構成員が湿地環境をどのように認識しているのかを明らかにするため、農家の家長もしくは成人世帯構成員に聞き取り調査を行った。これらの世帯の一部においては、イネ-ヒエ混作農法を試験的に導入し、農家と一緒に農法を実践する過程を通じて、季節湿地の自然環境を彼らがどのように認識しているのかを把握した。 <br><br>3. 結果と考察<br>(1)多様な季節湿地:ナミビア北部は年間平均降水量400mm程度の半乾燥地域に位置するが、北部のアンゴラ国で降った雨が洪水となって押し寄せるため、氾濫原のような環境が広がっている。先行研究では、本地域に網の目状に分布する季節河川(現地語でオシャナ)に注目が集められ、本地域の代表的な景観として水環境などが調査されてきた。しかし、本地域の氾濫原には季節河川以外の多様な湿地がみられた。この地域に降った雨がたまり、雨の多い年にはオシャナともつながる池沼(現地語でオンドンベ)が多数分布しており、オンドンベのなかにも植生や土壌環境の異なる複数の種類があることが明らかになった。<br><br>(2)季節湿地に対する住民の認識:本地域では降水量の経年変動が大きく、湿地の水環境も年々大きく変化する。現地の人々は、多数分布するオンドンベに関して、水位の変動パターンの差異や植生の違いを認識していた。そうした湿地間の差異は、湿地の呼称の違いとして分類されているものもみられたが、名称の違いとしては現れない環境の違いが人々に認識されていた。<br><br>(3)混作農法の導入と新たな在来知の創出:これまで、本地域では季節湿地の農業への利用は行われてこなかった。イネ-ヒエ混作農法を導入する際、ワークショップなどを通じて住民と意見交換を行ってきたが、新しい農法が人々に認識され、実践されていく過程において、在来の湿地環境に関する在来知が再認識され、新しく生みだされていた。<br><br>付記 本研究は、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)「半乾燥地の水環境保全を目指した洪水-干ばつ対応農法の提案」(代表 飯嶋盛雄)の一環として行なわれている。

Journal

  • Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers

    Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2014s(0), 100172, 2014

    The Association of Japanese Geographers

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