就業機会をめぐる地域格差 Regional Disparities on Job Oppotunities

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1.就業機会をめぐる地域格差<br>日本における地域格差をめぐる論点のひとつが,1980年半ば以降の「三大都市圏vs.地方」から「東京圏vs.その他」への移行である。多様な階層が三大都市圏へと集中した高度経済成長期と比べて,「東京一極集中」のもとでは東京圏に専門的な機能と職種が集中し,人口移動も「選択的」に高学歴層と女性が東京圏を指向している(中川2005)。就業機会の地域的偏在が,「東京圏vs.その他」の構図と大きく関わっているのではなかろうか。就業機会の格差を考えるうえでは,ピケティの『21世紀の資本』よりもコーエンの『大格差』で示された論点がまずは重要である。「平均の終焉Average is over」を論じるコーエンは,技術進歩に伴う中間層の減少に焦点をあてた。若年層にとって労働市場は「悲しい真実」として極めて厳しい状況である一方,高所得層がより高い所得を得る傾向が強まる。日本語訳の副題は「機械の知能は仕事と所得をどう変えるか」であるが,あわせて「機械の知能は機会の地理をどう変えるか」を検討する必要があろう。 『大格差』で示された論点は,グローバル・シティ論とからめて論じられてきた「分極化」や「専門職化」と重なるところがある。しかし,中間層の仕事が地理的により低賃金な地域へと移動していくことだけでなく,技術進歩に伴う仕事の質的変化に大きな関心が払われている。就業機会をめぐっては,質的変化と地理的変化をともに考慮しなければならない。<br>2.就業の地理―産業構造と職業構造―<br>地域格差や地域間の平等に関して何を問題視とすべきかは百家争鳴となるが,就業に関する機会均等が最も重要な問題であるとも位置づけられてきた(川島1976)。そこでは,機会均等実現のために,産業的多角化と地域間の産業構造の均衡が鍵となることが論じられた。しかし,産業構造とともに職業構造にも目を向ける必要がある。橘木・浦川(2012)では,居住地域に対する住民の意識は「さまざまな仕事がある」という就業機会について東京圏をはじめ三大都市圏で高い数値を示し,専門的・技術的職業従事者と管理的職業従事者をあわせた「新中間階層」の割合との相関が示唆されている。また,「特に男性に関して,人的資本レベルの高い個人が,地方から都市(東京圏)に移動している可能性がある」ことが提起されている。製造業における職業構成に着目した長尾(1996)で示したように,製造業は階層的な立地体系を基軸としつつも,管理職や事務職に関わる就業機会を三大都市圏以外の地域でも生み出し「さなざなな仕事がある」ことに貢献した。サービス経済化は地方においても進展しているが,サービス業が比率的に高くなるのは製造業の発展が弱い地域であり,「ネガティブなサービス経済化」の側面もある(加藤2011)。さらに,統計分類上で広義のサービス業の専門的・技術的職業従事者をどのように評価すべきか難しい問題を含んでいる。 産業構造と職業構造からみて,規模においても構成においても東京圏が「さまざまな仕事がある」ことに卓越した地域である。しかし,東京圏で就業機会を得た「新中間階層」が「豊か」であり,階層間格差や「東京圏vs.その他」の格差を深化させていると断言できるであろうか。日本のように「経済的に豊かな」になった国には「楽さ」と「しんどさ」があり(斎藤2013),資産継承を考慮すると就業や所得だけで「豊か」とは限らないことにも留意しておく必要がある(長尾2013)。<br>

Journal

  • Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers

    Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2015s(0), 100161, 2015

    The Association of Japanese Geographers

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