岡山県南部の農業水路におけるスイゲンゼニタナゴの選好環境

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タイトル別名
  • Habitat preference by the endangered bitterling fish Rhodeus atremius suigensis in an agricultural channel in southern Okayama, western Japan.
  • オカヤマケン ナンブ ノ ノウギョウ スイロ ニ オケル スイゲンゼニタナゴ ノ セン コウカンキョウ

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抄録

国内希少野生動植物種であるスイゲンゼニタナゴが生息する農業水路において,本種にとっての好適な微生息環境を創出するためには,その生息に影響を及ぼす環境要因を把握する必要がある.そこで本研究では,農業水路においてスイゲンゼニタナゴが選好する環境を解明することを目的に,2014 年 6 月~2015 年 5 月の毎月,本種が生息する岡山県南部の農業水路で魚類調査と物理環境調査を行った. スイゲンゼニタナゴの在/ 不在を目的変数,各環境要因を説明変数として,季節ごとに一般化線形モデル(GLM)あるいは一般化推定方程式(GEE)を用いて解析し,AIC あるいは QICu を基準にモデル選択を行った結果,スイゲンゼニタナゴの出現に有意に影響する環境要因としては,正の効果では春期および夏・秋期の沈水植物の植被率と冬期の障害物および水上カバーの存在が,負の効果では春期の流速が選択された.したがって,スイゲンゼニタナゴの出現に重要となる環境要因は,季節によって異なることが明らかとなった.また,スイゲンゼニタナゴが出現した地点の水深と流速の月ごとの平均値については,季節にかかわらず,水深では 20~50 cm 程度の水域(調査期間全体での平均水深 37.7 cm),流速では 11.5 cm/s 未満の緩流域(調査期間全体での平均流速 3.4 cm/s)に限られていた.以上から,農業水路において,本種の保全策として好適な生息環境を創出する場合には,沈水植物と水上カバーの存在に加えて,流速 11.5 cm/s 未満(平均流速 3.5 cm/s 程度)の緩流域と 20~50 cm 程度の水深を伴う生息環境を整えることが重要と考えられた.

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