腰痛症の体幹筋力

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  • ~骨盤傾斜の違いによる検討~

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>腰痛症の原因を調べるために,健常者との体幹筋力の比較や体幹筋力測定の方法について,多くの研究がなされているが,姿勢異常で見られる骨盤傾斜の違いによる体幹筋力の比較については,我々が渉猟した限り見当たらなかった。本研究の目的は当院を来院した腰痛症患者の体幹筋力を測定し,骨盤傾斜での違いについて比較検討を行った。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>腰痛を訴え受診した患者89例(男性34例,女性55例),年齢58.4±18.7歳を対象とした。立位単純X線撮影は下位胸椎,腰椎,骨盤を含む前後像撮影,側面での機能撮影(中間位,前屈位,後屈位)を施行した。圧迫骨折,移行椎のあるものは除いた。骨盤傾斜角は土井口らの方法に基づき21°未満を骨盤前傾(前傾群),21°以上を骨盤後傾(後傾群)と定義した。筋力測定はアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターを用い測定し,腹筋力,背筋力,E/F比を算出した。測定肢位は足部が接地しない座位とした。筋力測定は疼痛による影響を少なくする為,初診時は当院で指導している腰痛体操を1週間施行し,再診時に測定を行った。体操を指導する際,骨盤傾斜角と下肢筋伸張性との相関を見る為,臀踵間距離測定とSLRテストを行った。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>前傾群の年齢は53±17.7歳,身長は163.8±8.8cm,腰椎前弯角は44.9±11.5度,骨盤傾斜角は13.1±4.8度であり,後傾群の年齢は67.6±14.6歳,身長は156±9.5cm,腰椎前弯角は28.4±13.8度,骨盤傾斜角は30±6.2度であり,後傾群は高年齢,低身長,腰椎前弯角は減少し,前傾群と比べ高齢者の特徴を呈していた。SLRは前傾群71.3±12.9°,後傾群75.8±13.4°,臀踵間距離は前傾群3.4±5.3cm,後傾群5.6±7.1cmと有意差はみられなかった。腹筋力は前傾群141.3±39.3N,後傾群111.2±36.7N,と前傾群が有意に高く,背筋力は前傾群167.5±40.6N,後傾群129.4±36N,と前傾群が有意に高い結果になった。しかしE/F比においては前傾群1.22±0.28,後傾群1.21±0.30と有意差はみられなかった。骨盤傾斜角と体幹筋力及び下肢伸張性において,両群とも相関を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>腰痛を訴える患者を骨盤傾斜角度により,前傾群,後傾群に分類した。骨盤後傾群は低伸長となり,腰椎の生理的前弯の減少(後弯変形)を認め,高齢者の腰痛症の特徴を示していた。腰椎の生理的前弯が消失し,脊柱の後弯変形をきたすことで椎体へのストレスが増加し圧迫骨折のリスクが高まる。その為当院では,背筋力低下を認める高齢者に対し,トレーニングと姿勢指導を行い,腰痛治療並びに圧迫骨折の予防を行っている。臨床において,筋力測定は信頼性,安全性が高い方法が推奨されている。本研究の方法は,臥位で痛みがある者,後弯変形により肢位がとれない者にも関係なく測定でき,短時間での評価可能である。足底が接地しないことで下肢筋力の影響を受けず,純粋な体幹筋力として評価可能である為,有効であると考えた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578695552
  • NII論文ID
    130005608331
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0302
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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