股関節疾患患者における立位姿勢時の健側への荷重偏移を改善させる試み:―重心動揺リアルタイムフィードバック装置を用いた調整的介入―

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抄録

<p><b>【はじめに,目的】</b>整形外科疾患では片側性に疼痛や筋力低下などが生じることが多く,患側への荷重不安感や支持性低下の訴えが多い。荷重の左右非対称性は,両脚の相同的な調節で実現される立位姿勢調節に不調和を生じさせる一因となり,自律的で冗長性のある本来的な姿勢調整の停滞・阻害をもたらす可能性が高い。本研究では,股関節疾患による左右下肢への荷重配分の非対称性を呈する患者を対象として,左右方向の重心動揺を調整的に介入する方法を立案・実施し,重心偏移の調整的介入を実施した前後の立位姿勢調節の変化を検証したので報告する。</p><p></p><p></p><p><b>【方法】</b>対象は当院でリハビリテーションを実施している,手放しで立位が可能な股関節疾患患者12名とした。立位時における左右下肢への対称的な荷重配分を促すことを目的として,重心動揺リアルタイムフィードバック装置(BASYS,テック技販社製)を用いた介入を実施した。装置上で足部位置を左右対称の幅に規定した立位姿勢をとらせた。足圧中心(Center of Pressure:COP)の左右方向の変位に応じて,COPと逆方向に床面を動作させるフィードバック操作(anti-phase条件)を与えた。条件設定として段階的にCOP動揺量の約5%,10%,15%と増加させ,立位時の対称的な荷重配分を企図した調整的介入を行った。介入効果の評価として,30秒間の静止立位および随意的な左右動揺時のCOP計測をサンプリング周波数1000Hzにて実施した。評価項目は,COPの95%楕円信頼面積,総軌跡長,COP動揺の前後左右の平均位値,及び最大範囲とした。介入前後の平均値の差の検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。各評価変数のpost/pre間の変化率を算出し,変数相互の関係をpearsonの積率相関係数を用いて検討した。</p><p></p><p></p><p><b>【結果】</b>介入前は12名中9名が健側へのCOP平均位置を示していたが,介入後に7名が正中方向への変位を示す結果が得られた(12名の平均値では左右平均位置に,介入前後で統計的有意性はなし)。一方,介入前後で静止立位時の95%楕円信頼面積に有意な減少を認め(p<0.05),COPの平均位置が前方変位する結果が得られた(p<0.05)。</p><p></p><p></p><p><b>【結論】</b>本研究で実施した重心動揺リアルタイムフィードバックは,健側方向に荷重が変位した際に,当人の明確な意図を伴うことなく患側へ荷重を促進させるように作用するものである。介入により,10名のCOP位置が正中方向へ変位したことは,この方法を用いることで,疾患由来による左右下肢への荷重配分の不均衡が改善されたことを示す結果であった。加えて,介入後の静止立位において95%楕円信頼面積が減少し,COP平均位置が前方に移動したことは,上記介入によって両脚での円滑な立位姿勢調節が促されたことを示唆している。本研究より,股関節疾患に対する重心動揺リアルタイムフィードバックを用いた左右方向への調整介入が,荷重の不均衡性と立位姿勢調節の改善を図る上で有用となる可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2016(0), 0255, 2017

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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