名詞の視覚提示が上肢の把持・挙上動作の力学的制御に及ぼす影響:名詞重量錯覚課題による検討

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著者

    • 上田 将吾
    • 畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室
    • 信迫 悟志
    • 畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室|畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
    • 森岡 周
    • 畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室|畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

抄録

<p>【はじめに,目的】上肢の把持・挙上動作に視覚情報が及ぼす影響として,寸法重量錯覚(Gordon, 1991)や材質重量錯覚(Buckingham, 2011)が報告され,視覚的に対象物を重いと予測した場合,より強い力で把持・挙上動作を行うことが知られている。また,対象物に記載された形容詞や動詞は上肢の到達・把持動作における運動学的パラメータに影響することが報告されている(Gentilucci, 2000;2003)。しかしながら言語の運動力学的パラメータへの影響や,名詞提示による影響は検討されていない。今回,材質重量錯覚のパラダイムを用いて名詞重量錯覚について検証し,名詞重量錯覚と材質重量錯覚の運動力学的な違いを明らかとすることを目的に実験した。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は中枢神経疾患および右上肢の整形外科疾患の既往のない健常成人28名とし,うち14名(平均年齢29.6±6.5歳)は材質重量錯覚課題を,残りの14名(平均年齢29.1±6.3歳)は名詞重量錯覚課題を実施した。使用機器はMotion 3D Force Plate(以下M3FP;テック技販)とし,M3FPを把持・挙上する際の負荷力および把持力を測定した。M3FPに錘を取り付けることで重量を700gとし,サンプリング周波数は1000Hzとした。両課題ともに「鉄」条件と「発泡スチロール」条件を設定し,材質重量錯覚課題ではそれぞれの写真を,名詞重量錯覚課題ではそれぞれの名詞が書かれた用紙を,M3FPに貼付した。把持・挙上課題は各条件で20試行反復した。課題前には視認した2条件のうちどちらが重いと予測するかを問い,「発泡スチロール」を重いと予測した被験者は解析から除外した。手指がM3FPに接触した時点から1000msecを解析区間とし,負荷力の最大値である最大負荷力と把持力の最大値である最大把持力を算出した。両課題にて,条件要因と回数要因の反復測定二元配置分散分析を実施し統計処理した。なお,有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】材質重量錯覚課題では1例が「発泡スチロール」が重いと予測したため,解析から除外した。最大負荷力では交互作用(p<0.05)および条件要因の主効果(p<0.05)と回数要因の主効果(p<0.01)を,最大把持力では交互作用(p<0.05)と回数要因の主効果(p<0.01)を認めた。名詞重量錯覚課題では全例で「鉄」が重いと予測した。最大負荷力では回数要因の主効果(p<0.01)を,最大把持力では条件要因の主効果(p<0.05)と回数要因の主効果(p<0.01)を認めた。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究により,名詞重量錯覚が生じることが示された。また,材質重量錯覚では最大負荷力と最大把持力が影響を受けたのに対し,名詞重量錯覚では最大把持力のみが影響を受けた。以上の結果から,名詞の視覚提示は運動力学的パラメータに影響し,把持力への影響が大きいことが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2016(0), 0521, 2017

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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