外傷性くも膜下出血後に立位姿勢の不安定性を呈した症例に対する調節的介入:重心動揺リアルタイムフィードバックによる姿勢動揺の操作的減弱

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著者

    • 宮下 創
    • 独立行政法人地域医療機能推進機能星ヶ丘医療センターリハビリテーション部
    • 植田 耕造
    • 独立行政法人地域医療機能推進機能星ヶ丘医療センターリハビリテーション部
    • 西山 芽生
    • 独立行政法人地域医療機能推進機能星ヶ丘医療センターリハビリテーション部
    • 河島 則天
    • 国立障害者リハビリテーションセンター研究所

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>当院では,姿勢障害に対するアプローチとして重心動揺リアルタイムフィードバックを用いた調整的介入を試み,前々回,前回大会にてその効果についての報告を行ってきた。この方法は立位姿勢時の重心動揺量をフィードバック信号として床面を変位させるもので,本人の知覚にのぼらないレベルで重心動揺量を増幅あるいは減衰させることが可能となる。今回,外傷性くも膜下出血後に,運動や感覚麻痺が軽度にも関わらず立位姿勢時に著明な重心動揺量の増加を呈した症例に対し,姿勢動揺の調整的介入を行ったところ,姿勢調節の改善を示す結果が得られたため報告する。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は外傷性くも膜下出血,多発性脳挫傷を受傷後44日の80歳代の男性である。対象の身体機能は,SIAS(5,4,5,5,5),10m歩行時間は12.69秒と著明な麻痺は認めず,見守り歩行可能なレベルであった。外部観察上も明らかな立位姿勢時の動揺増加を認めたことから,30秒間の開眼静止立位の足圧中心(COP)を測定したところ,95%楕円信頼面積が8.36cm<sup>2</sup>,平均移動速度が2.99cm/secと健常者の3SD値を上回る結果を示した。症例自身は,揺れの大きさを自覚しながらも,動揺への不安定感は訴えず,「不可避に揺れてしまう」という特徴があった。本症例の特性を考慮して,重心動揺リアルタイムフィードバック装置BASYS(テック技販社製)の動作設定のうち,揺れを操作的に減弱させるIn-phaseモードを選択した。症例はBASYS上で開眼静止立位を保持し,COP動揺量の10%のIn-phaseフィードバックを1日30秒間を5回,7日間にわたって実施した。7日間の介入前後の評価は30秒間の開眼静止立位のCOPを重心動揺計(ANIMA社製G7100)で測定し前後方向の動揺速度,最大振幅,実効値を算出した。また前後方向COPの周波数解析により0-0.3,0.3-1,1-3(Hz)の3帯域の平均power spectral density(PSD)も算出した。またIn-phaseモードでの介入終了3週間後にも同様の評価を実施した。なお,介入期間にはROMexや筋力強化練習,立位バランス練習,応用歩行練習といった一般の理学療法介入も実施している。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>介入前後,介入終了3週間後における前後動揺速度(cm/sec)は2.66→1.4→1.25,前後最大振幅(cm)は4.85→2.66→2.19,実効値(cm)は1.14→0.58→0.56であった。周波数解析による平均PSDは,0-0.3Hzは203.8→143.4→142.3,0.3-1Hzは258.3→142.7→95.5,1-3Hzは39.3→22.4→20.0であった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>重心動揺計の各変数は,介入直後で大幅に減少し,3週間後まで緩やかに減少を続けた。平均PSDでは介入直後から3週間後まで各周波数帯域で減少を認め,特に0.3-1Hzで大幅な減少を認めた。本症例は,介入前には著明な姿勢動揺の増加を認めており,In-phase介入の効果として,重心動揺を減少させ,特に0.3-1Hz帯域の動揺を減少させる効果があり,その効果は3週間後にも継続する可能性を示唆している。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2016(0), 1129, 2017

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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