地域在住高齢者における身体機能と身体組成の評価指標による加齢変化の違い

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抄録

<p>【はじめに,目的】筋力や歩行の身体機能は加齢で低下し,体重や筋量などの身体組成指標も加齢の影響を受ける。しかし,これらの指標の加齢変化が日本人高齢者でどのような特徴を有しているかは十分なデータが示されていない。本研究では,身体機能評価の握力,椅子の立ち座りテスト(Five-Times-Sit-to-Stand:FTSS),歩行速度および身体組成評価の体重,脂肪量,四肢筋量の各指標における加齢変化を確認し,これらの加齢変化パターンが指標によって異なるかを横断データで検証した。加齢の影響を考慮するうえで重視すべき指標を提唱することが本研究の意義となる。</p><p></p><p></p><p>【方法】健診に参加した地域高齢者10885名のうち,パーキンソン病・脳卒中の既往者,MMSE18点未満者を除く10092名(平均73.6歳)を対象とした。身体機能は握力,FTSS,歩行速度で評価した。身体組成は多周波体組成計MC-980A(TANITA)で体重,脂肪量,四肢筋量を計測し,体重を身長の二乗で除したbody mass index(BMI)と四肢筋量を身長の二乗で除したappendicular skeletal mass index(ASMI)を算出した。統計解析では,各指標と年齢との関係は相関分析で調べ,各指標における加齢変化パターンの相違を検証するために,65~69歳の測定値が基準となるように65~69歳の男女ごとの平均値と標準偏差から個人のTスコア(50+10×(測定値-65~69歳の平均値)/65~69歳の標準偏差)を算出した。身体機能(握力,FTSS,歩行速度)および身体組成評価(BMI,ASMI)について,年齢(5歳区分)と各指標を要因とした二元配置分散分析を行った(危険率5%未満)。</p><p></p><p></p><p>【結果】身体機能のすべての指標が年齢と有意な相関関係を認め,加齢に伴い身体機能が低下していた。身体組成では,体重と四肢筋量が年齢と有意な負の相関関係を認め,脂肪量は男性で年齢との相関は有意ではなく(r=-0.02,P=0.19),女性では非常に弱い相関関係であった(r=-0.05,P<0.01)。Tスコア変化から各指標の加齢変化パターンを比較すると,男女ともに身体機能および身体組成のいずれにおいても有意な交互作用を認め(身体機能:F=10.0(男性),F=15.0(女性),P<0.01;身体組成:F=19.7(男性),F=58.0(女性),P<0.01),指標によって加齢変化パターンが異なっていた。男性では握力,女性では歩行速度で加齢による低下が顕著であり,身体組成はBMIよりもASMIで加齢による低下が男女ともに顕著であった。</p><p></p><p></p><p>【結論】身体機能の加齢変化は指標によって異なり,男性では握力,女性では歩行速度の低下が顕著であり,身体組成では体重よりも四肢筋量が加齢の影響を受けやすいことが示唆された。四肢筋量の低下が顕著であることより,身体組成の評価のなかでも骨格筋量の加齢変化を抑制することは重要であることが確認された。加齢で低下しやすい指標は異なることが示唆されたことは,身体機能および身体組成の加齢低下の抑制を推進するうえで,考慮すべき重要な情報になると考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577623040
  • NII論文ID
    130005609366
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1296
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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