国際的な自然保護制度の比較

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Comparative analysis of international conservation institutions

抄録

本発表では、保護地域の指定と保全管理を主軸とした国際自然保護制度として、世界遺産条約、ラムサール条約、ユネスコMAB計画、世界ジオパークネットワーク、世界重要農業遺産システム(通称、世界農業遺産)を取り上げ、①各制度の比較(国際レベルの比較)、② サイト間の情報共有や相互交流を担う国内ネットワークの比較(国内レベルの比較)を行い、各国際制度及び国内ネットワークの特徴を明らかにする。 <br> 本発表では、国内ネットワークとして、世界自然遺産地域ネットワーク協議会(自然遺産ネットワーク)、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議(ラムサール市町村会議)、日本ユネスコエコパークネットワーク(JBRN)、日本ジオパークネットワーク(JGN)、世界農業遺産国内認定地域連携会議(J-GIAHSネットワーク)を取り上げ、各国内ネットワークの事務局体制、入会資格、会費制度、実施事業等を比較分析する。なお、自然遺産ネットワークについては、設立が2016年6月と発足から日が短く、まだ組織体制が流動的で実施事業も少ないことから、同じく世界遺産条約に関係する「世界文化遺産」地域連携会議(地域連携会議)に関する情報も補足的なデータとして提示する。<br> 分析結果から、事務局体制として次の二つの形態が明らかとなった。一つは、自然遺産ネットワーク、ラムサール市町村会議、JBRN、J-GIAHSネットワークのように会長を担う自治体が事務局を兼務するものである。事務局の任期は会長任期等に付随し、ネットワークにより1-3年毎に交代することが確認された。一方、JGNでは、会員からの会費を原資として、特定非営利活動法人でスタッフを雇用し事務局業務を担っていることが明らかとなった。 <br> 次に、入会資格は、自然遺産ネットワークやラムサール市町村会議、J-GIAHSネットワークのように、すでに登録されているサイト[1]に関係する自治体が任意で参加するものと、JBRNやJGNのように、国際制度への登録を希望する地域も含め広く加入できる二つが確認された。自然遺産ネットワークやラムサール市町村会議では、自治体単位の加入が前提であるのに対し、JBRNやJGNでは、サイト単位の加入としている。 <br> 会費について、ラムサール市町村会議では、自治体の規模(政令指定都市、中核市、特例市、一般市、町村)に応じて会費を設定しているのに対して、JBRN、JGNではサイト単位で一律の金額を徴収している(ただし、準会員や研究会員といった種別も存在)。よって、複数自治体で構成されるサイトでは、サイト毎の協議会を設置し、そこでも別途、会費を徴収する重層性が明らかとなった。自然遺産ネットワークとJ-GIAHSネットワークでは会費の徴収が行われておらず、各自治体が無理のない範囲で緩やかにつながることが目的とされている。 <br> 実施事業に関して、いずれのネットワークについても、総会や研修会の実施が確認された。また、会費を徴収するネットワークでは、会費を徴収しないネットワークに比して多くの事業や活動が展開されている。例えば、ラムサール市町村会議では、環境省主催のエコライフ・フェアへの参加、JGNでは、ロゴマークの作製と商標登録や機関誌の発行等が行われている。 発表では、各ネットワークへの加入によって生じる費用と便益、地域への影響についても包括的に論じる予定である。 <br> [1] 各制度により、登録、記載、加盟、認定など様々な呼称があるが、ここでは紙幅の関係から、登録という呼称で統一する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672257280
  • NII論文ID
    130005635762
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100207
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ