神経堤細胞は八面六臂

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著者

    • 大隅 典子
    • 東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野

抄録

神経堤は,ヒトであれば受精後3~4週目,原腸陥入という現象により中胚葉が形成される時期,外胚葉の正中部が神経板となり,徐々に巻き上がって神経管となる頃,表皮外胚葉と神経上皮の境界部に形成される一過性の領域を指す。神経堤の細胞は脱上皮して神経堤細胞として体内を遊走し,移動先において多様な細胞に分化する。医学の一般常識としては,「神経堤細胞=末梢神経系の原基」という捉え方であろうが,顎顔面領域では骨,軟骨,歯牙等,口腔領域の組織に大きく寄与する。また,下垂体等の内分泌系組織の発生にも関わり,最終的にその結合組織を派生する。これらの内分泌器官は,遊走した神経堤細胞からの誘導を受けて発生が進むと考えられている。さらに,神経堤細胞の一部は発生途中で脳の中に再侵入し,毛細血管の周皮細胞や,オリゴデンドロサイトというグリア細胞にも分化する。一方,神経堤細胞の増殖・分化異常は多様な病態をもたらし,神経芽腫,褐色細胞腫,カルチノイド腫瘍,非クロム親和性傍神経節腫などの腫瘍や,von Recklinghausen症候群,多発性内分泌腺腫瘍症(Sipple症候群),De Gorge症候群,CHARGE症候群などに関与する。腫瘍の好発は,神経堤細胞の増殖性が高く多様な細胞に分化するという,幹細胞としての性質を有することに基づくと考えられる。本講演では,このように多彩な役割を果たす神経堤細胞の起源や発生過程について,われわれの研究成果を中心に紹介したい。神経堤細胞の発生に関する本講演が,口腔科学の学徒の皆様のresearch mindを刺激するものになれば幸いである。

収録刊行物

  • 日本口腔科学会雑誌

    日本口腔科学会雑誌 66(2), 61-61, 2017

    特定非営利活動法人 日本口腔科学会

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