フィンランドにおける家庭科教育の近年の動向

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タイトル別名
  • Tendency in recent years of Finish Home Economics Education

抄録

【目的】本報告の目的は、フィンランドにおける家庭科教育の近年の動向を明らかにすることである。<br />フィンランドにおける家庭科教育については、これまで、教育スタンダードの内容および教科の位置づけ、教科書および副読本の概要1、さらに授業実践2などが明らかにされている。しかしこれらはすべて1994年の教育スタンダードに基づくものであり、その後2004年、2014年の改訂を経て現在に至っている。<br />フィンランドは、ヨーロッパにおいて、家庭科が独立した必修教科として中等教育に設置されている数少ない国の一つである。また2003年以降、PISA調査など国際学力調査で一貫して好成績をあげていることで、世界から注目されているフィンランドのカリキュラムにおける家庭科の位置づけを明らかにすることは、大変意義深いと考えられる。<br />【方法】本報告は、国が定める教育スタンダードおよび東フィンランド大学への訪問調査により得た資料を元にしている。教育スタンダードはフィンランド国立教育局から出版された「基礎教育のためのナショナルコアカリキュラム2014」英語版を用いた。また、2017年2月にヨエンスーおよびサボンリンナに位置する東フィンランド大学教員養成課程、および同大学教育学部付属総合学校(Training School)ヨエンスー校を訪問し、大学教員、および家庭科教師への聞き取り調査、授業参観を行った。<br />【結果】得られた結果は以下の通りである。<br />(1)2004年の教育スタンダード改訂では、前期中等教育に食生活の内容などを含む家庭科関連の「健康教育」が新しい必修教科として加わった。また、内容が「コアカリキュラム」として示され、学校や教師の裁量が増えた。<br />(2)2014年の改訂において最も重視された点は、子どもたち自身の経験と活動および感覚と喜び、共に作業し他者との会話の中で学ぶこと、学習環境についての理解を刷新することであった。<br />(3)2014年改訂でも家庭科は基礎教育における独立した必修教科として位置付けられた。最低時間週3時間の授業数が義務づけられ、従来通り、小中一貫の総合学校では、通常7年生に必修の授業、8、9年生で選択の授業が行われている。それに加えて、今回の改訂で家庭科は、学校の判断により、選択の時間を用いて、前期課程(1~6年)の初等教育レベルでも教えられるようになった。<br />(4)今回の改訂では、2004年改訂までは、後期課程(7~9年生)の独立した必修教科として位置付けられていた「クラフト・テキスタイル」が、前期課程における「クラフト」と同一の教科になり、「クラフト」に名称変更された。また、後期課程の週最低時間は週3時間から2時間に変更された。<br />(5)訪問した東フィンランド大学のTraining Schoolは教員養成のための学校であり、他の公立総合学校と同様、学区制で近隣に在住する子どもたちが通っている。初等教育レベルでの家庭科の授業は行われておらず、7年生の必修家庭科の授業を参観した。当日は1単位時間75分×2コマの家庭科の授業が行われていた。年間を通して週3時間の授業が行われれば、時間配分は学校が判断できるとことであった。訪問した季節のキリスト教行事の際に食される、フィンランド伝統のお菓子を焼き、その作り方のビデオを製作するICT教育を含んだ実習が行われていた。<br />文獻<br />1)表真美(2004)フィンランド総合学校における家庭科教育(第1報)-フィンランドの教育制度と総合学校家庭科の目標・内容・履修-、(第2報)総合学校向け家庭科教科書・家庭科副読本の概要、日本家庭科教育学会誌47(2)128-146<br />2)表真美(2006)フィンランド総合学校家庭科の授業実践、日本家庭科教育学会誌49(3)189-196

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680573590144
  • NII論文ID
    130005966641
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_44
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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