非ニュートン流体モデルを用いた雪崩の3次元非構造有限要素解析

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タイトル別名
  • Three-dimensional nonstructural finite element analysis of snow avalanche using non-Newtonian fluid model

抄録

本研究は雪崩の数値解析法を提案する. 日本国内における雪崩予測には, 着目する地点から雪崩の発生地点を見上げた仰角の値を基に雪崩到達距離を予測する「見通し角法」が主に用いられてきたが, 簡易的な手法であるため, 複雑な地形の条件を考慮することができない. これに対して, 近年では数値解析手法がいくつも提案されており, それらの手法は, 静水圧近似を用いた2次元解析や3次元有限差分法に基づくものであるが, 前者は3次元性に富んだ地形には静水圧近似が成り立たないことや, 乗り越えなどの鉛直方向への3次元的な挙動が予測できないこと, 後者には直行格子を用いるために地形の再現に限界があることなどで課題があると考えられる. 急峻な斜面や複雑な形状の斜面でも雪崩が発生しており, 今後様々な条件の雪崩災害に対応するためには, 上述した手法の問題を解決するために手法の確立が必要である. そこで本研究では, 非構造格子を用いたSUPG/PSPG法に基づく3次元安定化有限要素法を採用する. 非構造格子を用いることにより複雑な地形の再現度が高くなることが期待され, その上で乗り越えなどの3次元的な挙動を表現可能となる. 基礎方程式であるNavier-Stokes方程式および連続式に対し, 雪崩の流動特性を表現するためにビンガム流体モデルを適用する. ビンガム流体モデルは, せん断応力が小さい領域では非常に大きな粘性を持つために流動が起こらないが, せん断応力がせん断強度を超えると急激に粘性が低下し, 流動が発生するというように, 時間・空間的に流動特性が変化する. せん断強度にはクーロンの破壊規準を適用することで, 流動特性を表現する主なパラメータは, 降伏後のせん断強度, 粘着力, 内部摩擦角の3つとなる. 支配方程式の離散化については, 空間方向には流速・圧力について1次の四面体要素を, 時間方向にはCrank-Nicolson法を適用する. また, 移流速度は2次精度のAdams-bashforth法より算定する. 雪崩の自由表面の表現には界面補足法の一つであるVOF法を用いる. 固定メッシュ上でスカラー関数であるVOF関数により空気と雪崩の気液2相流を表現し, 界面の移動はVOF法に基づく移流方程式より計算する. 移流方程式はSUPG法に基づく安定化有限要素法により, 支配方程式と同様に離散化して計算する. VOF関数は気相領域では0, 液相領域では1, 自由表面では0.5の値をとり, これより気相領域はニュートン流体, 液相領域はビンガム流体として計算を行う. 手法の雪崩への適用性の検証のために, 既往の研究で実施された模型実験の再現解析を行い, 数値計算結果より得られる流動距離および堆積形状, 衝撃力について, 実験結果と比較を行った. まず流動距離と堆積形状について, 既往の研究を参考にビンガム流体モデルのパラメータを操作し, 検証した結果, 整合性のあるパラメータが確認された. その結果を用いて衝撃力について検証したところ, その最大値と時系列変化として妥当な結果が得られたことから, 検証項目について手法の再現性が確認された. 続いて2011年に月山沢で発生した雪崩を対象として手法を適用し, 最終的な雪崩の堆積状態について実際の状況と比較を行った. <br>解析結果は実際の雪崩の流動挙動を精度良く再現しており, 複雑な地形, 防護壁の存在, 植生の影響などの複雑な条件下においても流動挙動を表現できることを確認した.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679450187776
  • NII論文ID
    130006022861
  • DOI
    10.11421/jsces.2017.20170011
  • ISSN
    13478826
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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