斜面水文環境の変化と土砂流出・地すべりの発生過程

  • 諏訪 浩
    東京大学空間情報科学研究センター 立命館大学歴史都市防災研究所(客員研究員)

書誌事項

タイトル別名
  • Slope hydrology controlling sediment discharge and landslide processes
  • シャメン スイモン カンキョウ ノ ヘンカ ト ドシャ リュウシュツ ・ ジスベリ ノ ハッセイ カテイ

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抄録

<p>これまで,山地の植生や火山噴火,森林火災が斜面水文特性をどのように規制するのか,またそれらが山地からの土砂流出にどのように影響するのかを検討してきた。これについて関連深い研究を概観することにより,次のような知見を得た。すなわち,禿げ山や草山など森林が乏しい状態は,斜面の降雨流出率が大きいことと樹木根系の表土緊縛効果が小さいため,表層崩壊や土砂流出が促されやすい。これに対し,森林飽和な状況では,斜面の降雨流出率は小さく,加えて樹木根系の緊縛効果が有効で,表層崩壊は抑制されることが少なくない。しかし付加体の流れ盤斜面では,森林飽和な状態は深層崩壊の素因になる。火山噴火があると,降灰に被われて土壌クラストが形成される。このため斜面の浸透能が激減する。加えて植生が失われることで降雨流出が激増する。この結果,土砂流出が活発化することが少なくない。森林火災も,同じような状況をもたらす。植生が損なわれることに加え,表土が撥水性を帯びることによって降雨表面流が激増し,これによって急に土石流が発生するようになり,災害が引き起こされることが少なくない。しかし,噴火後,また火災後の時間経過とともに降雨流出特性は元の状態へと戻ってゆく。噴火後と火災後を比べると後者のほうが回復はおおむね速い。このような水文地形学的斜面特性の認識は,土砂災害対策を考えるうえで欠かせない。</p>

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