序文

DOI

抄録

<p> 尿膜管は膀胱から臍にいたる管腔であるが, 臍から膀胱頂部までの様々な部位で, 拡張した管腔が遺残する場合がある. 部位により, urachal cyst, urachal fistula, urachal sinus, urachal diverticulumなどと呼ばれる. これに感染などを伴うと, 疼痛や発熱, 臍からの膿の流出, 血膿尿などの症状が現れ, 症候性 (感染性) 尿膜管疾患として治療される. 急性期は一般的に, 抗菌薬などの治療が中心となるが, 再発することもあり, 外科的な治療が考慮される.</p><p> 従来は開腹手術により遺残尿膜管を摘出していたが, 腹腔鏡下尿膜管摘除術が保険収載され, より低侵襲な外科的治療として普及してきている. しかしながら, 手術症例自体がさほど多くないため, 術式についてコンセンサスは得られておらず, 施設ごとに様々なアプローチがなされているのが現状である. 経験の多い施設でも, 年間に数例程度の手術症例数であろう. 手技自体は, 比較的容易であり, ほとんど経験のない施設でも比較的導入しやすい手術であると思われる.</p><p> 本稿では, 腹腔鏡下尿膜管摘除術の変遷と今後の方向性を佐藤先生に概説していただき, 基本的な術式 (側方アプローチ) を荒木先生に解説していただいている. もう一つの基本的なアプローチとして, 正中アプローチがある. この術式は, 臍の部分からopen laparotomyでカメラポートを挿入し, 左右の傍腹直筋レベル (臍よりやや尾側) に術者の左右のポートを置く術式である. 近年, このアプローチの発展型として, 単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術を行う施設も増加してきており, 矢西先生, 石井先生, 金先生には単孔式の術式について解説していただいている. また, 臍は腹部に位置する唯一の“チャームポイント”であり (あくまで個人的な意見です), 臍をどのように扱うかには, 各施設・各術者で様々な考えがあると思われる. 金先生には特に臍形成の工夫について解説していただき, 矢西先生には, 本術式の整容性について, データを示していただいている.</p><p> 本稿が, これから腹腔鏡下尿膜管摘除術を導入する先生方および単孔式手術に移行しようとされている先生方の一助になれば幸いである.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680490181248
  • NII論文ID
    130006172127
  • DOI
    10.11302/jsejje.30.115
  • ISSN
    21874700
    21861889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ