インバウンド・ツーリズムの発展を地理学で考える  [in Japanese] Examining the development of inbound tourism in Japan from geographical perspectives  [in Japanese]

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<b>1.はじめに</b><b></b> 日本をめぐる国際観光は,1960年代以降,アウトバウンド・ツーリズムがインバウンド・ツーリズムを凌駕してきた。この不均衡を是正するために,日本政府は2003年から外国人旅行者誘致政策を積極的に展開してきた。その結果訪日外国人観光者数は,2000年の500万人弱から順調に増加してきた。2009年(リーマンショック,新型インフルエンザ)と2011年(東日本大震災)に大幅な減少を示したものの,2012年以降はその数は再び順調に回復し,2016年には約2,400万人と見積もられており,日本人によるアウトバウンド・ツーリズム(1,700万人)を大きく上回る。  インバウンド・ツーリズムをめぐる近年の傾向として,上記の量的増加傾向に加えてさまざまな変化がみられる。まず第1に,外国人観光者の国籍が多様化していることがあげられる。2000年代前半までは東アジア諸国とアメリカ合衆国が主であったが,2010年代に入ると,東南アジア諸国やヨーロッパ諸国などからの観光者が増えている。次いで,外国人観光者の日本での観光行動が多様化するようになってきた。かつては,大都市の東京,著名な社寺が集積する京都,その他の名所・旧跡,温泉地などを訪れる外国人の観光行動が主体であった。しかし,行動の多様化とともに「SIT(Special interest tourism)」の重要性も高まり,外国人観光者の訪問が卓越する地域,すなわちインバウンドクラスターの多様化が顕著になりつつある。  それゆえ,インバウンドクラスターがどのようなかたちで多様化しているのか,観光者の出発国・地域によって行動の多様化は関連するのか,国土の地域特性といかなる関係を有しているのかなどに関する実態把握が求められる。つまり,インバウンド・ツーリズムの発展には地域差がみられ,地理学の立場からこの点を解明することが求められる。そこで本シンポジウムでは,日本におけるインバウンド・ツーリズムの発展を地理学の立場から明らかにする。   <b>2.インバウンド・ツーリズムの発展をめぐる地理学からの研究視点</b><b></b> 日本のインバウンド・ツーリズムに関してはさまざまな研究視点があるが,上記の観点,すなわち,国内のさまざまなスケールからなる行動空間,目的地,出発地,観光者の行動などの重要な指標に基づいて次のように整理できる。本シンポジウムでは,これらの4つの視点から,日本におけるインバウンド・ツーリズムの発展にみられる諸特徴を解明する。 <b> </b><b>1) </b><b>外国人観光者の行動変化と目的地変化</b><b></b> 観光庁などの機関や団体がまとめた資料やデータ(ビックデータ)に基づいて,外国人観光者の行動パターンの空間的特徴やその時間的変化を,国土スケールや地方スケールで明らかにする。本シンポジウムでは,ゲートウェイからみた時間的・空間的拡大,中国地方における空間的拡大,旅行者行動の空間構造について報告する。 <b> </b><b>2) </b><b>特定のインバウンド・クラスターにおけるインバウンド・ツーリズムの特性</b><b></b> インバウンド・クラスターを対象として,インバウンド・ツーリズムの実態を把握する。インバウンド・ツーリズムに関係する施設や組織などの分析,実際に滞在している外国人観光者の分析を通じて,インバウンド・クラスターとして発展プロセスを考察する。さらにインバウンド・クラスターにおける外国人向けサービス展開などのイノベーションの動向にも注目する。本シンポジウムでの報告内容は,中山道の宿場町,箱根などの温泉地である。 <b> </b><b>3) </b><b>特定の観光行動におけるインバウンド・ツーリズムの地域的特性</b><b></b> たとえばコンテンツ・ツーリズムなどの特定のツーリズムや行動を取りあげて,それらの広域な地域スケールでの特性を分析する。とくに,複数地域の比較研究を通じた一般性の把握や,インバウンド・クラスターの地域特性と関連づけた整理を試みる。本シンポジウム報告では,スキー・ツーリズムについて取りあげる。 <b> </b><b>4) </b><b>特定の外国人観光者による行動パターン特性</b><b></b> 外国人観光者は,中国人の買い物やオーストラリア人のスキーなど,特定の出発国・地域によって特徴的な行動パターンがある。それらの地域的展開を統計資料や文献等を利用してまたインタビュー調査を通じて解明し,さらに国土の地理的条件などと関連づけて考察する。本シンポジウムでは,出発地によるツーリズムの差異について知多半島を事例に,また韓国人旅行者を取りあげてツーリズムの特性とビジネスとの関係について報告する。   付記:本研究はJSPS科研費15H03274の助成を受けたものである。<br>

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  • Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers

    Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2017a(0), 100064, 2017

    The Association of Japanese Geographers

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