日本行動医学会における 教育研修の総括と今後の展望: 「問題解決アプローチ」の紹介

書誌事項

タイトル別名
  • Education and training of behavioral medicine and its future direction: introduction of problem solving approach
  • ニホン コウドウ イガッカイ ニ オケル キョウイク ケンシュウ ノ ソウカツ ト コンゴ ノ テンボウ : 「 モンダイ カイケツ アプローチ 」 ノ ショウカイ

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抄録

日本の医学部における2023年問題、すなわち「国際的な認証基準に適合した教育カリキュラムへと改変する問題」 は、行動医学教育にも大きな影響を与えた。具体的には、「行動科学」を医学部教育に含めることが必須となったため、独立した科 目にするのか、それとも別の講義科目(例:「プロフェッショナリズム」)に包含するのかは大学によって対応が異なるものの、各大 学医学部で行動医学の講義や実習をどのように進めるべきか試行錯誤を続けている。こうした国内の状況を受けて、日本行動医学 会(本学会)ではワーキンググループ(グループ長:堤明純理事)を立ち上げ、医学部教育のモデルとなる行動医学コアカリキュラ ムを提案した。さらにコアカリキュラムをこなすための教科書「行動医学テキスト」(編者:本学会)を、2015年10月に刊行した。 本学会が提唱した行動医学コアカリキュラムの具体的な内容は、本学会誌「行動医学研究」(20巻2号63―68頁, 2014年)と日 本医学教育学会誌「医学教育」(46巻1号37―40頁、2015年)に掲載され、日本心身医学会の和文雑誌「心身医学」や英文雑 誌「BioPsychoSocial Medicine」にも特集論文が刊行されており、J-stageやPubMedを通じて全文がインターネットで検索でき る。以上のように、最近の数年間は、「医学部における行動医学コアカリキュラム」を中心とした教育研修会を、本学会では主催し てきた。具体的には2013年度「教育研修の中で学ぶべき行動医学:コアカリキュラムの紹介も含めて」(研修会場:京都大学)、 2014年度「医学教育における行動医学」(同:早稲田大学)、2015年度「行動医学の推進とコアカリキュラム」(同:東邦大学)、 2016年度「医療現場や職域・地域の活性化に役立つ行動医学教育」(同:沖縄科学技術大学院大学)という表題で、本学会の 年次総会期間中に研修会を実施してきた。本学会は1992年の設立以来25年間が経過し、臨床医学・公衆衛生学・心理学の融 合を図る学術横断的な組織として活動を続けてきた。したがって、今回提案した行動医学コアカリキュラムは、医学部や医療系教育 機関での教育研修を意識しているが、その応用範囲は幅広い。あらゆる組織・集団の健康問題に対応できる教育内容を含有してい ると考えている。そのことを証明するため、2016年度の本学会研修会では、「問題解決アプローチ」についても紹介をした。「問題 解決アプローチ」または「課題解決アプローチ」といわれる手法は、従来からビジネスの世界で頻用されてきた。最近は医学・医 療系教育の領域においても重要になってきている。不健康行動に関連する生活習慣を変容するためには、個人(患者など)・現場 (職場や医療機関など)・地域(地方自治体や国など)の各レベルでの対策が必要である。その各レベルでの行動を推進するために は、科学的なエビデンスに基づいた実効性のある解決策を立案・実施できる人材の育成が必要となってくる。この人材教育の要とな る考え方が、「問題解決アプローチ」である。本総説では、まず本学会で実施してきた教育研修活動を概観し、次に行動医学コア カリキュラムの内容を改めて提示し、最後に話題とした「課題解決アプローチ」教育の実例について紹介をする。

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