深層学習を用いた水文気象場のダウンスケーリング手法の開発

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Development of downscaling method for hydrometeorological field using deep learning

抄録

気候変動の影響を研究するために使われている全球気候モデル(General Circulation Model: GCM)は空間解像度が低いため,GCMの出力のダウンスケーリングが行われてきた.特に,領域気候モデル(Regional Climate Model: RCM)による力学的ダウンスケーリングは,物理的基礎があるため,温暖化時の予測に信頼がおける一方,計算コストが大きいという欠点があった.RCMの低コスト化を試みた既往研究はあるが、決定的な手法はまだ存在しない.本研究では,近年開発が進み,画像認識や音声認識で非常に高い精度を持つことが報告され,水文気象学を含む様々な分野での応用も始まっているニューラルネットワーク(Artificial Neural Network: ANN)の新しい技術である深層学習を用いた水文気象場のダウンスケーリング手法を開発することを目的とする.<br />本研究では,ある時刻tのGCMの気象場を入力に,同じ時刻tのRCMの気象場を予測させた.予測するRCMの気象場の変数は,6時間毎の地表面2m気温と降水とし,それぞれ別々のネットワークを学習させた.ネットワークの入力変数は,GCMの地表面2m気温または降水に加え,500hPaのジオポテンシャル高度,200hPaと850hPaの風速u,vの6変数を使用した.ネットワークは,入力層,2層の中間層および出力層からなる4層フィードフォワードネットワークとした.<br />データは,Suzuki-Parkerら(2014)による,20世紀20年分とRCP4.5における21世紀20年分のマルチGCM・マルチRCMアンサンブルシミュレーションから,GCMはMRI-CGCMを,RCMはRSMを用いた出力結果を使用し,20世紀のデータで自己符号化器を使った事前学習と学習を行い,21世紀のデータで評価を行った.<br />結果は,地表面2m気温と降水ともに,RCMの細かい空間変動やピーク値の大きさは表現できていないところもあるものの,おおまかな気象場は予測できていた.しかし,評価データで精度が落ちる場合があった.<br />本研究では,深層学習を用いた水文気象場のダウンスケーリングの枠組みを構築した.今後は,学習データに20世紀と21世紀の両方のデータを使用したり,ネットワークの改良を行ったりしてダウンスケーリングにおける深層学習の有効性の検証を続けていく予定である.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680690272256
  • NII論文ID
    130006236414
  • DOI
    10.11520/jshwr.30.0_9
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ