深海産遊泳性のなまこ-ユメナマコ<I>Enypniastes</I>の写真観察

書誌事項

タイトル別名
  • Photographic Observations of the Swimming Behavior of the Deep-Sea Pelagothuriid Holothurian <I>Enypniastes</I> (Elasipoda, Holothurioidea)
  • Photographic observations of the swimming behavior of the deep-sea pelagothuriid holothurianEnypniastes (Elasipoda, Holothurioidea)

抄録

駿河湾および相模湾内の舟状海盆沿いの陸棚斜面, 水深約600~1, 500mには遊泳性のユメナマコが多産する. 同海域の水中写真約26,000景から当該種が海底近傍数メートル以内に35個体見出されたが, 26例が遊泳中であり, 1例が着地直後, 8例が海底を歩行していた. 水中カメラの視野特性を考慮して補正すると, 遊泳個体と海底歩行個体の割合は約9: 1と考えられる. 写真画像からこのゼリー状で脆弱ななまこの体制を詳しく観察し, その遊泳行動を解析した結果, 遊泳は背前方の襟状摺と体後側部の管足が膜によって癒合した扇状器官の協調で行なわれること, またその行動は離陸, 上昇, 停留, 下降および海底歩行の連鎖として把えられることがわかった. しかし, 写真観察とトロール標本の胃内容調査から, 摂食は海底でのみ行なわれることが判明した. 歩行能力が著しく減退したこの種は, 移動と分散に底層流の特性を積極的に利用しているように考えられ, 泳ぎ上る高さも海底境界層中の乱流エクマン層の平均的な厚み (数メートル) と対応している.

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参考文献 (10)*注記

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