媒介手段としての文字はどのように生まれるのか

書誌事項

タイトル別名
  • Ontogenesis of Letters as a Mediational Means of Thinking in Young Japanese Children :
  • —インスクリプションに媒介された行為の発達—
  • Development of Inscription-Mediated Action

抄録

文字獲得はこれまで主に文字形態に焦点をあててきたが, 本研究では思考の媒介手段としての文字の機能に焦点をあてる。子どもが産出する物理的な線を総称して「インスクリプション」と呼び, それが想起の媒介手段として機能する発達過程を明らかにすることが本研究の目的である。ヴィゴツキーの「二重刺激の機能的方法」に基づき, 呈示文を後で思い出せるようにインスクリプションの産出を促すメモかき課題を3歳から7歳の80人に実施した。子どもが産出したインスクリプションの形態と, それによる想起成績の関係を検討したところ, インスクリプションは年齢と共に図像, 文字へと順次移行し, 想起手段として役立つようになっていった。さらに, 想起手段として文字を産出した者とそれ以外の者の課題遂行過程を比較検討したところ, 図像利用者は呈示文の意味を記すのに対して, 文字利用者は呈示文の音韻を記そうとしていた。インスクリプションはその形態変化を伴いながら, 媒介手段にほとんどならない多様な線画の状態から, 図像, そして文字に媒介された行為を形成する段階へと順次移行していく。

収録刊行物

  • 教育心理学研究

    教育心理学研究 65 (3), 333-345, 2017

    一般社団法人 日本教育心理学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (10)*注記

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