家庭科教育養成における「家庭看護」学習教材の効果

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タイトル別名
  • The effect of learning teaching materials of "Home nursing" in teacher training of home economics

抄録

問題と目的<br /> 家庭科の教員養成では、免許法上の必要科目として家庭看護があるが、その開講の仕方は様々である。特に、保育学などの授業の中に家庭看護を含む場合には、少ない授業時間の中で家庭看護の内容を十分に網羅することが難しい。本研究グループでは、これまでに教員免許法上の扱い、学習指導要領、および家庭科教科書の内容を整理し、家庭看護で扱う内容について検討を重ね、家庭看護の内容の指導ができる教員を養成するための授業に必要なパワーポイント形式の学習教材を開発した。<br /> 本研究では、この学習教材を用いて、実際に家庭科の教員免許取得を目指す大学生を対象に家庭看護の授業を行い、その効果と課題点を明らかにすることを目的とした。<br />研究方法<br /> 平成29年4月~5月の期間に、家庭科の教員養成課程に所属する3校、64名の大学生(1年生と2年生)を対象として、家庭看護の授業を実施した。授業はいずれも「保育学」の全15回中の1回の授業であった。調査は、授業の前後で同一内容の質問紙を実施し、カイ二乗検定および対応のあるt検定を用いて家庭看護の授業の学習効果を調べた。<br /> 具体的な授業の内容は次の通りである。パワーポイント教材は「健康管理(子どもと健康・基本的な看護)」「予防対策(感染症・予防接種)」「事故防止(事故の実態・子どもの発達と事故・事故の予防)」「母子保健(母子保健法・母子健康手帳・乳幼児健康診査・社会全体で子育てをサポートすること)」の4分野で構成されたものであり、産業技術総合研究所の協力を得て、視覚的に分かりやすい教材を開発した。例えば、子どもの事故が起こりうる状況を映像で示すなど、視覚的なイメージを持ちながら授業内容の理解が促されるように工夫した。<br />結果と考察<br /> 大学入学以前に家庭看護の学習をした経験がある学生は61名中26名で、学習経験がないと答えた学生が9名、わからないと答えた学生は26名であった。高等学校学習指導要領において家庭看護の内容の占める割合は多いとは言えないが、その内容を扱うことが示されているにもかかわらず、半数以上の学生は家庭看護を学習した記憶が無いことが分かった。 <br /> 教材を使った授業の結果、カイ二乗検定によって有意に正解者が増えた項目は以下のとおりである。「予防接種法の改訂により、乳幼児の水ぼうそうの予防接種は有料になった」「乳児は生後3~6ヶ月を過ぎると、母体から受け継いだ免疫力が弱くなるため感染症などにかかりやすくなる」「乳幼児が誤飲した場合、とにかく吐かせることが必要である」「父子手帳と祖父母手帳がある」。<br /> また、事前と事後を比較したt検定の結果、乳幼児の「健康維持対策」「体調の変化」「予防接種」「感染症」「事故の種類」「母子保健法」「母子健康手帳」のすべての項目において、「知識をもっている」の得点が事後に有意に高くなった。「健康維持対策」と「体調の変化」を除く項目において、「興味がある」とする得点も高くなった。<br /> 一方で、子どもへの関心については、学習の前後で有意差はみられなかった。これは、家庭看護の学習以前から、子どもへの関心の高い対象者が多かったことが要因の一つとして考えられる。<br />今後の課題<br /> 開発した教材を用いた家庭看護の授業の実施によって、実際の正答率の向上だけではなく、学生自身の自己意識としても知識の向上が確認された。しかし、「健康維持対策」と「体調の変化」の項目においては有意な興味の向上はみられなかった。これらの項目については、教材の内容を再検討し、学生の興味関心を得られる工夫を教材に盛り込むことで、さらなる学生の理解を促していく。<br /> 生涯発達的な視点から家庭看護を捉え、乳幼児期の健康な身体について学ぶことを通して、生徒が自分自身の身体についても考えられるような教材の内容が求められていると考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571687936
  • NII論文ID
    130006442009
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_97
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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