生徒減少期の高校教育機会

書誌事項

タイトル別名
  • Maintaining Opportunities for High School Education in Low-Fertility Societies:
  • ―日台比較から見る公私分担と多様性の確保の課題―
  • The Role of Private Schools in Japan and Taiwan

抄録

<p> 生徒減少期の高校教育機会の確保には,量的不足への対応が求められた拡大期とは異なる位相の問題が孕まれている。この局面では準義務教育機関となった高校に求められる質的に多様なニーズを満たしつつも規模を縮小させることが必要となるからである。本研究は,同じく生徒数の減少に直面しつつある日本,台湾を事例として取り上げ,高校教育機会を維持し続けること,そこで浮かび上がってくる課題について公私関係を軸に検討する。<br> 日台ともに公立高校の供給不足を私立高校が補完して高校拡大が達成されたため,私立高校はセミ・パブリックな性質を持つようになった。加えて,日本では都道府県に公私協議会を設置して入学定員の按分が行われてきた。それは量的変動のショックを負担し合うことで教育機会の安定的な供給に寄与した。しかし,生徒数が減少し続ける中,定員の按分方式では私立高校の経営が維持できなくなる事態が生じつつある。一方,台湾では2014年の「十二年国民基本教育」実施に伴い,義務教育が実質的に高校まで延長された。この政策は教育機会の平準化や質の均質化を目指すものであるが,少子化の進行,地域間格差などの現実に即したものではない。特に地方で私立職業高校の存続を難しくし,政策の意図とは裏腹に教育機会の平等が担保されない事態が生まれつつある。両社会とも縮小局面で,私立高校の役割をふまえ機会の平等をどう保障していくかが問われている。</p>

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