皮膚ガス測定および鼻腔内微生物検査に基づくPATMに関する考察

DOI Web Site Web Site 参考文献1件 オープンアクセス
  • 川上 裕司
    株式会社エフシージー総合研究所 IPM研究室 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター
  • 関根 嘉香
    東海大学大学院 理学研究科
  • 木村 桂大
    AIREX株式会社 技術研究所
  • 戸高 惣史
    東海大学大学院 理学研究科
  • 小田 尚幸
    株式会社エフシージー総合研究所 IPM研究室

書誌事項

タイトル別名
  • An exploratory study on "people allergic to me" syndrome based on measurement of trace gases released from skin surface and microbial species in nasal cavity of a patient
  • ヒフ ガス ソクテイ オヨビ ビコウ ナイ ビセイブツ ケンサ ニ モトズク PATM ニ カンスル コウサツ

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抄録

自分自身が皮膚から放散する化学物質によって,周囲の他人に対してくしゃみ,鼻水,咳,目の痒みや充血などのアレルギー反応を引き起こさせる体質について,海外ではPATM(People Allergic to Me)と呼ばれ,一般にも少しずつ知られてきている。しかしながら,日本では殆ど一般に認知されておらず,学術論文誌上での報告も見当たらない。著者らはPATMの男性患者(被験者)から相談を受け,聞き取り調査,皮膚ガス測定,着用した肌着からの揮発性化学物質測定,鼻腔内の微生物検査を実施した。その結果,被験者の皮膚ガスからトルエンやキシレンなどの化学物質が対照者と比べて多く検出された。また,被験者の皮膚から比較的高い放散量が認められたヘキサン,プロピオンアルデヒド,トルエンなどが着用後の肌着からも検出された。被験者の鼻腔内から分離された微生物の大半は皮膚の常在菌として知られている表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)であった。分離培地上でドブ臭い悪臭を放つ放線菌(Arthrobacter phenanthrenivorans)が分離されたことはPATMと何か関連性があるかもしれない。また,浴室や洗面所の赤い水垢の起因真菌として知られている赤色酵母(Rhodotorula mucilaginosa)がヒトの鼻腔内から分離されたことは新たな知見である。この結果から,PATMは被験者の思い込みのような精神的なものではなく,皮膚から放散される化学物質が関与する未解明の疾病の可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 室内環境

    室内環境 21 (1), 19-30, 2018

    一般社団法人 室内環境学会

参考文献 (1)*注記

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