患者腎機能の正確な評価の理論と実践

  • 平田 純生
    熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・臨床薬理学分野
  • 柴田 啓智
    恩賜財団済生会熊本病院薬剤部
  • 宮村 重幸
    国家公務員共済組合連合会熊本中央病院薬局
  • 門脇 大介
    熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・臨床薬理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Theory and practice of accurately assessing the renal function of individual patients.
  • カンジャジンキノウ ノ セイカク ナ ヒョウカ ノ リロン ト ジッセン

この論文をさがす

抄録

<p>腎機能は糸球体濾過量(GFR)で表され、イヌリンクリアランスは最も正確なgold standardであるが、測定手技が煩雑であるため、実臨床ではあまり用いられない。多くは血清クレアチニン(Cr)値を基にした腎機能推算式であるCockcroft-Gault(CG)式による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や日本人向け推算糸球体濾過量(eGFR)が用いられるが血清Cr値は男女差、筋肉量による差があり、併用薬による影響を受けることなどを理解しておく必要がある。腎排泄型薬物の投与設計には正確な腎機能の見積もりが必須であるが、標準体型男性以外ではeGFR(mL/min/1.73m2)ではなく体表面積未補正値(mL/min)を用いる必要がある。ただし抗菌薬・抗がん薬など投与量がmg/kgやmg/m2となっている際には体表面積補正値(mL/min/1.73m2)を使う。またCG式は肥満患者では腎機能を過大評価するため理想体重を用いる必要がある。添付文書にCCrによって投与量を定めている場合、そのほとんどが海外治験データによるため血清Cr値をJaffe法で測定されており、Jaffe法によるCCrはGFRに近似する。そのため添付文書上はCCrで表記されていても患者の腎機能には実測GFR、推算GFRまたは実測CCr×0.715を用いる。海外と日本の添付文書が同じCCrの記載であっても、ハイリスク薬では酵素法で測定したCCrで投与設計するとJaffe法と酵素法のわずかな差が過剰投与による重篤な副作用リスクにつながる恐れがある。痩せた高齢者で筋肉量が少ないためeGFRが高く推算される場合には、正確に腎機能を評価するには実測CCr×0.715あるいはシスタチンCによる体表面積未補正eGFR(mL/min)を用いる。若年者で血管作動薬・輸液の投与を受けている全身炎症の患者においては過大腎クリアランスにより腎機能が正常以上に高くなることがある。</p>

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ