ミミズの団粒形成速度は個体群によって異なる―サクラミミズを用いた研究事例―

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  • Earthworm population is a significant regulator of rate of formation of soil aggregates: a case study in <i>Eisenia japonica</i> (Michaelsen, 1892)
  • Earthworm population is a significant regulator of rate of formation of soil aggregates : a case study in Eisenia japonica (Michaelsen, 1892)

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抄録

団粒形成は土壌の肥沃度改善に重要であり,ミミズはその団粒を形成している.ミミズが糞団粒形成に及ぼす影響を土壌温度や水分との関係で評価する研究がこれまでに行われているが,そういった研究では,通常1個体群のみで評価している.サイズなどの生態的特性は,地域個体群により少し異なると考えられ,団粒形成速度にも影響を及ぼすと考えられる.しかし,地域個体群がミミズの団粒形成速度に及ぼす影響は明らかになっておらず 1 つの個体群のミミズ重量と団粒形成量の関係が全ての個体群に適用出来るかどうは明らかになっていない.そこで本研究では,サクラミミズをモデル生物とし,地域個体群がミミズの団粒形成速度に及ぼす影響を,室内実験により評価した.実験では 4 つの個体群の亜成体,成体または亜成体や成体に十分なりうる重量のミミズを用い,ミミズの重量と団粒形成量の関係を比較した.ミミズ重量と団粒形成量の関係は,べき乗の関係式で近似できることが明らかになっており,本研究もこの式を用いてミミズ重量と団粒形成量の関係を評価した.地域個体群の影響は,モデル選択により評価した.モデル 1 は,全ての個体群の結果を 1 つのべき乗の式で表現したモデル.モデル 2 は,地域個体群により個別の式で表現したモデル.モデル 3 は,地域個体群をランダム効果としたモデル.これら 3 つのモデルを赤池情報基準(AIC)で比較するとともに,統計的に有意にモデルが異なるかを評価した.その結果,AIC の値はモデル 1 >モデル 3 > モデル 2 となり,それぞれのモデルは有意に異なる(p < 0.001)事が明らかとなった.これらの結果は,個体群により団粒形成速度が異なることを示している.一方で日本全国といった広域で団粒形成速度を推定する場合,全ての個体群でミミズ重量と団粒形成速度の関係を調べることは難しい.このため,広域でサクラミミズの団粒形成速度を推定する場合,地域個体群をランダム効果としたモデルを用い,ある特定の地域においてサクラミミズの団粒形成速度を評価する場合は目的とした地域個体群の重量と団粒形成量の関係式を用いることを提案する.

収録刊行物

  • Edaphologia

    Edaphologia 100 (0), 31-36, 2017

    日本土壌動物学会

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