新規疾患治療法開発のヒントは「微生物の生存戦略」に隠されている?

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冬虫夏草という語を初めて目にし「虫なのか草なのか,一体これは何者だろう?」と興味を抱く人は少なくない.昆虫の亡骸からキノコが生えた奇妙な姿形や,その正体が糸状菌(いわゆるカビ)である事実に驚かされたのは筆者だけではないだろう.冬虫夏草の一種であるサナギタケCordyceps militarisは,平板培地においてもキノコを形成するため人工栽培法が確立され,国内でも健康食品として市販されている.その成分の1つがコルジセピン(cordycepin:COR)であり,抗がん,免疫賦活,精力増強など,様々な薬理活性を示すことが知られている.CORはアデノシンの3́位デオキシ体であり,アデノシンとの類似性が故にポリメラーゼによる伸長途中のRNA鎖に取り込まれる.ところが,3́位水酸基が欠如しているため更なる伸長反応が起こらず,細胞増殖が阻害される.一方,CORは生体内のアデニンデアミナーゼ(adenine deaminase:ADA)によって容易に薬物代謝(脱アミノ化)され,活性の減弱化した3́-デオキシイノシン(3́-deoxyinosine:3́dI)を生成する.そのため,かつて実施された白血病治療薬としての臨床試験においては,ADA阻害薬であるペントスタチン(pentostatin:PTN)との併用療法が検討されていた.今回,未解明であったCOR生合成遺伝子が同定され,その独特な生合成戦略が明らかにされたので紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Tuli H. S. et al., Life Sci., 93, 863-869(2013).<br>2) Xia Y. et al., Cell Chem. Biol., 24, 1479-1489(2017).<br>3) Wu P. et al., Cell Chem. Biol., 24, 171-181(2017).

Journal

  • Farumashia

    Farumashia 54 (5), 458-458, 2018

    The Pharmaceutical Society of Japan

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