薬剤溶出性バルーンによる治療後に遅発性ステント血栓症を発症した1例

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  • Late stent thrombosis after treated with drug coated balloon in CYP2C19 poor metabolizer

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抄録

<p> 症例は73歳の女性. 左前下行枝Seg7) を責任病変とする心筋梗塞を発症し, 通常型金属ステント (Bare Metal Stent ; BMS) を留置した. 2カ月後にステント内再狭窄をきたしバルーン拡張術 (Plain Old Balloon angioplasty ; POBA) を施行した. 3カ月後の確認造影にてステント内再狭窄をきたし, 薬剤溶出性ステント (Drug Eluting Stent ; DES) を留置した. 4年後, ステント内閉塞を認め, さらにDESを留置した. その9カ月後, 確認造影にてステント内閉塞を認め薬剤溶出性バルーン (Drug Coated Balloon ; DCB) で拡張した. その4カ月後, 急性心筋梗塞を発症し, 前回のDCB拡張部位のステント内に血栓像を認め, バルーン拡張術を行った.</p><p> DCBはステント内再狭窄に対する治療として広く使用されるようになっているが, DCB治療後のステント血栓症の報告例は極めて少ない.</p><p> 本症例では抗血小板剤2剤併用としてアスピリン, クロピドグレルを使用した. クロピドグレルは薬剤活性を発揮するために2段階のCYP代謝を受ける. CYP2C19の遺伝子多型があるとクロピドグレルの薬効が減弱することが報告されている. CYP2C19遺伝子の相同染色体に塩基変異を認めればキャリアと呼ばれ, 1方のみに認めればintermediate metabolizer (IM), 双方とも塩基変異を認めればpoor metabolizer (PM) と表現され, キャリア群はステント血栓症の頻度が有意に高くなると報告されている.</p><p> 本症例は遺伝子検査の結果, CYP2C19のPMであることが判明し, クロピドグレルからプラスグレルに変更後は有効な血小板凝集能低下を認めた. CYP2C19のpoor metabolizerにおけるDCB拡張後の遅発性ステント血栓症という稀有な症例を経験したため, ここに報告する.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 48 (10), 1187-1193, 2016

    公益財団法人 日本心臓財団

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