粒子法を用いた燃料ノズル内のキャビテーションを伴う流動解析

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  • Computational Fluid Dynamics with Cavitations in a Fuel Nozzle Using Particle Method

抄録

ガソリンエンジンの燃料インジェクタにおける噴霧特性はエンジンの効率に加えて環境面においても重要な要素となっている. 中でも, シリンダ内に直接燃料を噴射する直噴型では, ノズル内で生じるキャビテーションの様相が噴射された燃料の微粒化特性に大きな影響を及ぼすことが知られている. このため, ディーゼルエンジンを含めた直噴インジェクタのノズル内キャビテーションに関する研究は, 実験および数値解析を用いてこれまでに数多く行われている. 特に, 計算機の能力が向上した近年は数値解析を用いた研究が非常に盛んである. ところが, その多くが界面捕獲法などの格子や要素に基づいた手法であり, これらを用いない粒子法の例は非常に少ないという印象がある. しかし, 複雑な気液二相流であるノズル内のキャビテーション流れに対して, 界面がぼやけてしまうことがなく, 流体の界面の大変形や分裂・合体の扱いを得意とする粒子法の利点は大いに活かされると考える. <br>本研究では粒子法の利点を活かすべく, 粒子法の一種であるMPS (Moving Particle Semi-implicit) 法を用いてノズル内キャビテーション解析のための新たなキャビテーションモデルの開発を行い, 検証を行った. ノズル流量は上流部と下流部の圧力差が大きくなるにつれて増加するが, ノズル内にキャビテーション領域が増えると, その増加傾向は停滞する. これは, 個々の気泡が集団として大きな気相空間を生じることで流路を塞ぐからだと考えられ, ノズル内に発生する気相領域の大きさおよび発生箇所は流れ場に大きな影響を及ぼしていると考えられる. このことに着目し, 提案モデルでは気泡の成長速度を直接的に計算することはせずにノズル内に生じる気相領域の大枠を捉えるようにモデル化をしている. <br>MPS法におけるキャビテーションモデルには, 液体中の気泡の質量を各流体粒子に変数として持たせ, キャビテーション発生に伴う気泡の成長と崩壊を流体粒子の粒子径を変化させる従来モデルがある. 不均一粒子径を扱うこのモデルでは, 近傍粒子間で粒子径が大きく異なることによって計算の不安定性が増す, 内包する気泡の成長に伴う流体粒子の粒子径の変化率を任意の定数パラメータを用いて決定するためキャビテーション気泡の発生分布が大きく変わり得る, という問題を有していた. 当初, このモデルの前述した問題を排除した改良モデルを考案したが, 従来モデルに倣い気泡の成長速度を考慮する方法に簡略化されたRayleigh-Plesset方程式を用いたところ数値的に不安定になり易いという知見を得た. <br>そこで考案したのが提案モデルであり, 気相には一様近似を用いて粒子を配置せず, 液相にのみ粒子を配置する手法となっている. 提案モデルでは, 液体内部で負圧が発生する場合, 粒子数密度が低下することによって液体内部に自由表面が発生するというMPS法の性質を活かし, 発生する界面に境界条件を付与することによってキャビテーション領域の模擬が行われる. したがって, 気泡の成長速度を直接的に計算することはしないので, 従来モデルやその改良モデルにおける問題点が生じない. <br>提案モデルを用いたシュミットノズル内流れの解析では, 質量流量は実験結果とよく一致し, 差圧値が増大するにつれて流量が閉塞状態へと遷移する様子が確認された. また, ノズル内のキャビテーション領域の発生は, ノズル前後差圧が大きくなるにつれて, まずノズル入口角部で確認されるようになり, 次にノズル出口角部からも確認され, 最終的にはノズル下流全域で確認された. この傾向は, 実験結果に一致し, ノズル前後の差圧値に対するキャビテーション領域の分布も近い結果を示した.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282679449772288
  • NII論文ID
    130006832477
  • DOI
    10.11421/jsces.2017.20170013
  • ISSN
    13478826
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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