歯科恐怖症による心因性嘔吐・嘔気を伴う22q11.2欠失症候群患者に対する静脈内鎮静法の1例

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  • A Case of Intravenous Sedation Management for a Patient with 22q11.2 Deletion Syndrome with Psychogenic Nausea and Vomiting Causing by Dental Phobia

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抄録

<p>22q11.2欠失症候群は,先天性心疾患や顔貌奇形などを合併する.心因性嘔吐・嘔気は,過去の記憶が原因で異常絞扼反射をきたす状態をいう.今回,過去の治療経験が原因で,歯科治療に対して心因性嘔吐・嘔気を伴うようになった22q11.2欠失症候群患者に対する静脈内鎮静法を経験した.</p><p>患者は35歳の男性.全顎的な歯科治療を希望して来院した.22q11.2欠失症候群,ファロー四徴症根治術後,軽度精神遅滞,適応障害を合併していた.現病歴として,下顎右側智歯部歯肉が腫脹,発赤を繰り返していた.慢性歯周炎やう蝕症も認めたが,自覚症状はなかった.治療に対する恐怖心から異常絞扼反射を認めたため,静脈内鎮静法下に下顎智歯抜歯術を予定した.薬物を用いた行動調整法を行わなくても治療が行えるように,その後の治療を計画した.</p><p>下顎智歯抜歯術に先立って,感染性心内膜炎の予防を目的に,アンピシリンを静脈内投与した.内服薬の抗精神病薬は,アドレナリンと併用すると血圧低下を起こすことがあるため,局所麻酔薬に含まれるアドレナリンは濃度を希釈して使用した.ミダゾラムとデクスメデトミジンを用いて薬物的行動調整法を行い,呼吸抑制は認めず,異常絞扼反射を抑制することができた.</p><p>う蝕症の治療は静脈内鎮静法で,歯周基本治療は薬物を使用せずに行動変容法を用いて行った.口腔内診察や歯面清掃は異常絞扼反射を認めずに覚醒下で行えるようになった.</p>

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