根本的治療;今までの軌跡と未来への展望  [in Japanese]

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アルツハイマー病の根本的治療法は、アミロイドカスケード仮説を基にAβ凝集阻害剤(tramiprosate)、非ステロイド性抗炎症剤(tarenflurbil、Flurizon)およびγ-セクレターゼ阻害剤(LY450139、MK0752)などが開発されたが、いずれも臨床試験は中止となった。一方、アルツハイマー病に対するAβワクチン療法は、能動免疫によるAN1792(QS-21)-201 Study やAβに対するモノクローナル抗体を投与する受動免疫療法(bapineuzumab、LY2062430、RN1219)の臨床試験が行われたが、有効性は確認されなかった。特にbapineuzumab のPhase III 臨床試験では、臨床評価ではADAS-cog、DAD はコントロールと差が無かった。しかし対象のバイオマーカーは改善しており、脳に沈着したAβのクリアランスは認められ髄液中のp-tau 量は減少していた。問題点として、介入時期の問題で投与時期が遅い事が指摘されている。また診断基準の問題もありアルツハイマー病を対象としているが、ApoE4 non-carrierでは、36. 1%の症例においてアミロイドPET でAβの蓄積が認められず、ApoE4 carrier でも6. 5%の症例でAβの蓄積が無かった。以上の結果より2011 年には米国国立老化研究所/ アルツハイマー病協会による新たな診断基準とともに軽度認知障害(MCI)、さらにpreclinical ADの診断基準が提唱されている。そして新たな臨床試験は軽度認知障害または発症前段階で抗Aβ療法を開始する試みが始まっている。Alzheimer's Disease Cooperative Study(ADCS)のA 4 trialでは、アミロイドPET陽性だが、未発症の70 歳以上の高齢者を対象とした二重盲検プラセボ比較試験を3 年間にわたり行う予定である。Genetech 社はAlzheimer's Prevention Initiative(API)を立ち上げ、コロンビアの家族性AD の血縁者324 名を対象としたcrenezumab を用いた抗アミロイド療法の発症予防効果について、60ヶ月間の二重盲検プラセボ比較試験を開始すると発表した。アミロイドβ蛋白の沈着や老人斑の形成は、preclinical AD〜初期MCI の時期に進行している。アルツハイマー病と診断された時点では既に脳神経細胞の萎縮・脱落が起こっており、この段階でワクチン療法を行っても病理学的進行を阻止できない可能性がある。将来的にはアミロイドイメージングを用いた早期診断、ワクチンによる早期治療がアルツハイマー病の予防的治療に有効であると考えられる。

Journal

  • Japanese Journal of Cognitive Neuroscience

    Japanese Journal of Cognitive Neuroscience 15(2), 113-113, 2013

    Japanese Society of Cognitive Neuroscience

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