小児期の上室性頻拍症15例の検討

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抄録

〈緒言〉小児における上室性頻拍はしばしば経験するが、乳児期に発症するものは急激にうっ血性心不全が進行し、重篤な状態となる。 また年長児では、ときに再発が多く日常生活のQOLが障害される。 近年小児でもカテーテルアブレーション治療が行われるようになり年長児の生活のQOLが改善され福音となっている。<BR> そこで、最近7年間に当科で経験した上室性頻拍症の15症例について臨床像、短期治療、長期治療につき検討した。<BR> 〈結果〉乳児期発症は9例(男児4例、女児5例)、幼児期以降の発症は6例(男児4例、女児2例)であった。 乳児期発症例はすべてが生後3ヵ月以内に発症していた。 3例は初診時に著明なうっ血性心不全を呈していたが、残りの6例は、偶然に発見されていた。 うち1例は胎内で一時頻拍を指摘されたが出生時は不整脈は認めず生後4日から上室性頻拍発作を発症した。 急性期の治療は、1例は治療開始前に自然軽快したが、他の8例は digoxinの急速飽和とATP急速静注をおこない発作は治まった。  幼児期以降発症の6例の年齢は4歳から13歳で、発作時心拍数は毎分160から270であった。 症状も腹痛や胸部不快感・動悸で、循環呼吸状態への大きな影響は認められなかった。 薬物治療は、ATPの急速静注、又はATPとDigoxinの併用であった。 乳児期発症の9例のうち非発作時の心電図から副伝導路の存在が示唆されるものは3例であった。 発作予防薬は、digoxinが5例、digoxinとpropranololの併用が3例 頻回に再発した1例はdigoxin,propranolol,disopyramide の併用をおこなった。 digoxinは血中濃度に注意して全員が内服した。予防内服の期間は 全例で8ヶ月~1歳までで、内服中止後 発作が再発した例は、なかった。 幼児期以降発症例では、1例がmanifest WPWであった。 発作予防薬は原則的には無しとしていたが、経過中発作が頻回になった2-3ヶ月間のみ、やむをえず予防内服を行った。 2例では、薬物が必要な発作の頻度が高く、年齢が高くなるにつれて生活に支障を来たすようになった。 そのため高周波カテーテルアフ゛レーションの適応と考え、施行したが、その後は上室性頻拍発作はなく良好な経過をたどっている。<BR> (結語) □乳児期早期の発症例では重症の心不全に陥る前の発見が重要でその後数ヶ月を良好な発作予防をすることが重要であり、 年長児では頻回発作する例ではカテーテルアブレーション治療にもちこむことがQOL改善のため重要であることを再確認した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495175808
  • NII論文ID
    130006944981
  • DOI
    10.14879/nnigss.56.0.55.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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