IPEX症候群とヒトTreg細胞

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抄録

IPEX(immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked)症候群は、免疫調節障害、1型糖尿病(IDDM)や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常、難治性下痢などの症状を呈し、乳幼児期に致死的となるきわめてまれな疾患である。近年、その責任遺伝子としてFOXP3遺伝子が同定された。FOXP3遺伝子はforkhead familyに属する転写因子であり、制御性T細胞(Treg)の発生・分化を司る。IPEX症候群ではTregの機能障害のため、さまざまな自己免疫疾患や炎症性疾患を発症すると考えられる。近年、Tregが免疫応答において重要な働きをすることがマウスを中心に解明されてきているが、ヒトTregの機能について十分理解されているとは言えない。今回わが国のIPEX症候群患者の臨床的、免疫学特徴を報告するので、ヒトTregの機能を理解する助けになれば幸いである。<BR> わが国における4家系5名のIPEX患者について解析する機会を得た。発症年齢は生後5日から4か月であり、家族歴は3家系で認められた。FOXP3遺伝子変異は227delT、A384T、F373V、748delAAGであった。初発症状は甲状腺炎が1名、下痢が3名、IDDMが1名であり、経過中にさまざまな自己免疫疾患を合併し、うち1例ではネフローゼ症候群を合併した。治療は無治療の患者もいれば、免疫抑制療法を受けている患者もおり、うち2名は造血幹細胞移植を受けた。<BR> IPEX症候群において抗FOXP3抗体を用いたフローサイトメトリーによる診断が可能かどうかを検討した。健常人では末梢血においてCD4+CD25+FOXP3+T細胞を約5%認めるが、IPEX患者では全例とも1%以下に低下しており、フローサイトメトリーによるスクリーニングは有用であると思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205525500544
  • NII論文ID
    130006949797
  • DOI
    10.14906/jscisho.37.0.30.0
  • ISSN
    18803296
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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