教員養成における「教育実習」履修前後での「実践参加型授業」の意義

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タイトル別名
  • The significance of participation in classes before and after practice teaching at a teachers college

抄録

目的:<br> 昨年度の研究発表に引き続いて、本研究では、「教育実習」履修前後に当たる2年生と3年生の間で「実践参加型授業」によって得られるものの違いを明らかにする。これらによって、家庭科教員養成カリキュラムの構築に示唆を得ることを目的とする。<br>方法:<br> 2003年度の実践に改善を加え、2004年度「実践参加型授業」では、小・中学校の家庭科を中心とする授業への参加を9_から_12月に実施した。受講生は2年生12名、3年生4名であり、各受講生の実践参加は、題材や参加回数によって以下の五タイプに分けられた。_I_:被服製作・7回以上の型(2名)、_II_:被服製作・4回以下の型(4名)、_III_:小学校1日参加を含む型(3名)、_IV_:被服製作と調理又は保育の混合型(3名)、_V_:被服製作・3年生の型(4名)。すなわち、_I__から__IV_はすべて2年生、_V_は3年生である。受講生には毎回の実践参加後1週間以内に「学んだこと」「感想、反省」計1,000 字程度のレポートを提出するという課題を出し、そのレポートの記述内容を本研究の分析の資料とした。<br>結果:<br> まず、レポートを分析するにあたって、その記述内容を「子どもの見方」(子どもの姿が具体的に描かれている)、「子どもへの関わり方」(学生自身が直接子どもと関わった内容やその時の思い)、「教師の仕事」(授業の中で教師が実際に行っていたことやそれに対する思い)、「大学における学び、(今後の)課題」(授業に参加して意識化された学生自身の中・長期的な(学習)課題)、「その他」(授業への感想、教材・教具等への意見など)の5項目に分けて捉えた。そして、まず、受講生の学年が異なり、参加した授業の題材が共通している、_I_、_II_(共に2年生)と_V_(3年生、参加回数は5回)の間で、記述内容を比較することにした。<br>2年生と3年生の共通点としては、「子どもの見方」「子どもへの関わり方」の記述が大変多い点である。被服製作の様々な場面で様々な子どもの姿を見て、また、それに関わりを持ったことで、色々な思いや問題意識を得ていることがわかった。ただし、この共通点の中にも、記述の仕方(課題を持つ主体が誰か)が2,3年生の間で若干異なる場合もあることがわかった。それは、2年生では、課題は専ら授業支援者としての学生自身の課題として描かれている(例:手本通りでない時、どこから以下を指摘したらいいのか難しい。どうすれば興味や楽しさを感じてくれるか課題。等)のに対して、3年生では子ども達の課題としても描かれるようになっている点である(例:先生の話の中で理解出来なかったことは、わかるまで聞けるようになることが課題。等)。<br> 次に、2年生と3年生で異なる点として「教師の仕事」についての記述量が異なる点がある。ただし、これは、同じ2年生でも参加回数が「7回以上」と多い場合に著しく記述が多いのに対して、「4回以下」と少ない場合には3年生と同様に少ないので、必ずしも「教育実習」履修による差異ばかりでは無いかもしれない。<br>また、「大学における学び、(今後の)課題」についての記述は、2年生では全員が1回以上はあることに対して、3年生では全く記述が無い人もいるという明らかな差異があった。<br>以上の点から、「教育実習」を履修していない2年生時期の「実践参加型授業」は、その後の「大学における学び、(今後の)課題」に、より強く影響することがわかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680568780800
  • NII論文ID
    130006961083
  • DOI
    10.11549/jhee.48.0.43.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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