被服製作学習における用具の改善

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タイトル別名
  • The proposal of the improvement of the instrument used in sewing
  • On the basis of the sewing machine monitoring survey conducted on women's students
  • ー女子学生のミシンモニター調査からー

抄録

<目的> 布を使ったものつくりの指導は、児童・生徒さらに短大・大学の学生においても知識・技能の低下や興味・関心の希薄さから多くの課題を抱えており、教材や指導法について種々の研究が行われている。本研究は、製作環境面から課題解決をはかることを目的として、代表的な用具であるミシンの日常的な使用実態に基づく改善等について検討した。<br><方法> ミシンを一定期間貸与し、その間の使用状況および使用上の意見や要望を中心にモニター調査した。 対象は教育学部に在籍する女子学生22名である。モニター22名のうち応募によるものが13名、依頼が9名である。モニター期間は2004年8月_から_10月初旬の約60日間である。貸与したミシンは12通りのジグザグ機能のある直線縫いミシンで、自動糸調子設定、上停止・下停止機能等がある。種々の機能については調査期間前にモニターに説明をした。調査方法は、記録用紙を配布し、ミシン使用時に使用日時、作業内容、使用場所、使用機能や縫い目の種類等についての記入を依頼した。また、製作物、作業場所、収納場所の写真による記録も依頼した。さらに、モニター期間後に記録内容をもとにミシンの使用感やミシンへの要望やこれまでの被服製作に関する学習経験等について記入式および聞き取りによる調査を行った。<br> <結果> モニターがミシンを使い始めたきっかけは、「身近な人がミシンを使用していた」ことが70%と多く、「家庭科の授業」とする人の割合を大幅に上回った。<br>さらに「身近な人からミシンの使い方や裁縫を教えてもらった」経験は85%が持ち、今回のモニターについては家庭縫製にふれる環境が幼少時代にあったことがわかった。しかし、モニター期間前の日常的な布を使ったものつくりは55%が「していない」状況であった。 モニター期間中のミシンの使用日数は、モニターの72%が1日_から_5日間であり、平均使用日数は11日であった。最大では32日間の使用もあったが、全く使用しなかったモニターが4名あり、縫製の基礎知識がないことや縫製用具が揃っていないことが意欲を欠く要因であったことがあげられた。<br>ミシンの使用場所はほとんどが自室で、「こたつくらいの高さの座卓」「20cmくらいの高さの木箱や机」と座位での使用が80%であった。ミシン使用時の不都合な点として、ミシンが重いことや準備の面倒さ、スペースの確保の難しさがあげられており、製作意欲に用具と住環境の相互の問題が影響することが示された。<br>モニター期間中のミシンの使用目的は、衣服製作はリメイクも含め8名(9点)あったが、全般的にはマットやカーテンなどの生活用品(35点)やバッグや小物の製作(16点)、衣服の裾直しなどの補修(28点)など、簡易なものが多かった。<br>使用した機能などについては、モーターの作動は「スタートストップボタン」の使用が86%であったが、座位の使用状況でも膝を立ててコントローラを使用する例もあり、両手が作業に使用できる利点へのこだわりもみられた。また、押さえは7種あったが、作品の部位や布の特性に応じて付け替える事はなされず、基本押さえのみで製作されていた。ジグザグ縫いは30%の作品に使われていたが、刺繍模様縫いについてはほとんど使われず、将来子どものために作るものに使う縫い目、との位置づけがされていることがわかった。<br> 以上の結果から、ものつくりの意欲を支持し持続させるために、ミシンはさらに軽量化と省スペース化、使用実態に応じて選定された機能に簡易化する改善が求められるとともに、被服製作学習におけるミシン指導においては、生活用品など容易なものの製作活動の実態を視野にいれて、教材設定されることの必然性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680568802688
  • NII論文ID
    130006961095
  • DOI
    10.11549/jhee.48.0.38.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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